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オーダースーツのヨシムラ
新着レポート

 SHOPMASTER この春のジャケット
季節は変わり外出するにはとても良い時期になりましたが読者の皆さんはお元気でしょうか?
当社の近くでも千鳥が淵や英国大使館などお花見スポットはいくつかあり、この辺に行くと春が来たことを実感できます。
今年は景気が悪いと言いつつも、これも円高や高速道路休日1,000円など少しずつですが消費者心理も好転しそうな兆しも見えてきましたから早くこちらも春が来ると良いですね。

さて
明るい話、暗い話がごちゃまぜになってしまいましたが、当社は基本的には何事にも前向き。
今年は景気が悪そうだからやめとくか、、、とならないよう、どんなに景気が悪くても自ら率先してオーダーをします。

そこで今月はSHOPMASTERこの春のジャケットと題し、私がこの春仕立てたジャケットを皆さんにご紹介したいと思います。
今回は125周年記念の生地で仕立てましたのでそちらを検討中の方は是非参考にしてみて下さい。

■ さてさてどんなジャケットを仕立てようかな? ■
今回のオーダー、生地は初めから125周年記念のネイビー無地にすることは決めていました。
何てったって周年記念ですからね。私が作らないでどうします!!
あと25年経って引退した後、150周年の時に店頭展示出来るぐらい大切に着てやるんだ!!というつもりです!
ですからコンセプトは...
 ・ 飽きが来なくて
 ・ 流行に左右されず  
 ・ シンプルで
 ・ 使い勝手の良い
この辺をキーワードにしてみました。
なぁ〜んだ、ベーシックなジャケット(紺ブレ)か〜...とお思いの方もいるでしょう。
確かに流行に左右されず、長く着られるといえばトラッドが最適ですから、ベーシックなトラッドのメタルボタンジャケットなどが一番無難でありがちです。

でも、それでは当店(私)らしくない!!
加えて私の悪い虫も『こんなんじゃお前のジャットじゃない!』と騒ぎ出します。
そこで、温故知新も良いのですが、そこに最新モードも加えてみることにしました。それは・・・

■ カバー付きマニカカミーチャ仕様 ■
マニカカミーチャと言えば今ではイージーオーダーでも出来るようになった『 シャツ袖風に袖付けが雨降らしのようにギャザーが付いた仕様』を言いますが、これにカバーを付ける?

どうでしょうか?
皆さんピンと来る方いらっしゃいますか?
きっとどこの既製品でもオーダー屋さんでもやってないと思いますのでなかなかイメージが付かないかと思います。

実はこのカバー付きマニカ、そのヒントは大阪のあるテーラーさんが見せて下さったイタリアの某サルトの製品に由来します。
その製品は「カバー付き」の言葉通り、マニカカミーチャの雨降らしの袖付けが目立たなくなるようなカバーを付けた仕様だったのですが、その製品を拝見した時、マニカカミーチャのカジュアルすぎる短所をうまく抑え、一方で技術的にも非常にレベルの高い仕事をしていたためビックリしてしまいました。
それで、こんな仕様を当店でも!!と思い、店主さんにお願いしたのですが持ち出しも撮影もNG。

最終的には吉井工場長の大阪出張に合わせてそのテーラーさんへ出向き、作り手自らに製品を見て貰うという最終手段に出る始末。
そこまでして、企画するんですからどんな物が出来るのか?楽しみです。

■ デザインは・・・ ■
肩周りのカバー付きマニカカミーチャは確かに重要なポイントですが、それだけではジャケットとして不完全です。
全体のバランス一番大切ですから、全体デザインを紹介しますとこんな感じです。

□ 生地は・・・ □
>>> 生地は前述の通り125周年記念反からネイビー無地を。
この素材はこんな特徴があります。(現物の生地はサンプル帳のP.1に掲載していますのでイメージが付かない方はサンプル請求下さい)

色目がネイビーの霜降り
>>> この生地は先染めといって糸の段階で染色した物を使っています。
このためその糸を複数色で染めた物で撚って生地にするとベースの色以外に他色が混じりモヤモヤっとした霜降り状の見た目になり色合いが複雑になります。
また、ベースの色目がネイビーというのは濃紺と違って色目に優しさが広がり、濃紺の紺ブレとは違った柔らかい雰囲気が生まれます。

3プライ
>>> 3プライ(3つ杢)は3本の細い糸を撚って1本の太い糸にした物。
昨今は単糸・双糸といって1〜2本の糸で撚ることで軽さを表現する生地が多い中、3プライは糸全体が太くなり、生地になった段階ではザックリとしたやや肉厚なざらっとした触感が生まれます。

色々書きましたが最終的な素材感は、やや堅めカチッとしたそれでいてカジュアル色のある色目の生地といった感じです。

□ デザインは・・・□
基本デザイン
>>> シングル2Bジャケット(ボタン位置普通)
今回は長く着るジャケットですからごくごくベーシックにボタン位置も普通の2つボタンにしました。

シルエットは
>>> シルエットは極めてタイト!!
元来私はあまりタイト目な物は好きではないのですが、ここは紺屋の白袴にならないよう格好良く!!
身幅のゆとり量もヌード寸法+8cm位。
特筆すべきは袖幅の細さでしょうか。
こちらもかなり細くしましたから出来上がりは脇下に隙間ができるはず
上着丈もジャケット単品の場合はスッキリ仕上げるため短めに

腰ポケット
>>> フタなしアウトポケット
ビジネス兼用ジャケットをイメージしましたが、生地が意外とカチッとしているのでこれならアウトポケットにしてもドレスダウンしすぎにならないと判断し、胸ポケは普通(切りポケ)、腰ポケはアウトポケットにしてみました。

ボタン
>>> 良いアクセントになるかな?と思いチョイスしたのはナットの茶色ボタン
これなら茶靴と合わせるときも便利そうです。
その他、黒蝶貝辺りも検討しましたが昨年似たような取り合わせのジャケットを作ったので私の場合はNG。

■ さて、出来上がりは・・・■
さてさて、これだけじらした私のジャケット。
して、その出来上がりはいかに?
それでは、ご覧下さい。まずは 全体像から・・・

いかがでしょうか?
ネイビージャケットですからグレイパンツならまず間違いなし。
全体がタイトシルエットですから結構エレガント。
そしてまた意外とカッチリ出来ているのでこれならスッキリ見えてビジネスでも好感度アップ間違いなし、、、な仕上がりではないですか?
(モデルの自分が言うのもなんですが、、、(-_-;) )
では、スッキリ見える要因は ...

いかがでしょうか?
スッキリ見える要因は、身幅の太さにも因りますが意外や意外袖幅の太さも視覚的に大きく影響します。
今回はスッキリ見せたいのでかなりタイトにして、袖丈もスーツよりは気持ち長目に、そして軽くフレアにさせて仕立てました。
自分で言うのも何ですが、良い感じ...
肩は・・・
前段で盛り上げてしまった肩の仕立て。
ここまで盛り上げてしまうとどうにも気になってしまいます。
そこで、気になる肩の仕上がりを詳しく紹介するとこんな感じ。

どうですか?
薄手のパッドを入れていることもありますが、正面から見ると肩先も落ちず、良くあるキツい雨降らしになっていないことがお分かり頂けますか?

僅かに肩先が少し厚くなっているのはカバーを付けた分肉厚になっためです。
でも、横から見ると...意外や意外結構雨降らしになっています。

う〜ん、横から見ると良い感じの雨降らしになったマニカカミーチャです。
では、カバーはどんな物なの?
そこで生まれるカバーはどんなものか?ですが、カバーの間に指を入れて見ました。
ちょうど深さにすると7mmぐらいでしょうか、これで隠れるのは雨降らしのギャザーが一番キツク入っているところです。
良い感じに雨降らしのキツイ部分が隠れているのではないでしょうか?
そして、ジャケットの裏仕立ては・・・

表ばかりに気がいってしまいがちですが、見返しもお洒落にしたました。

大見返し(アンコン仕立て)です。

今回はフルオーダーで仕立てましたが、フルオーダーの場合は見返しの細々した処理がやはり丁寧です。
例えば、パイピング
僅かなことですがイージーオーダーより細く綺麗に仕上げます。
また、内ポケット
あれっ?玉縁が細い?、と気付かれた方もいらっしゃるかも知れませんが、これは揉み玉縁といってチケットポケットなどで仕立てる細い仕上げ。
こうすることで見た目がスッキリし、軽量化にも貢献します。
いかがでしょうか?
シンプルに見えながらも凝りに凝ったカバー付きマニカカミーチャ。

夏物はすぐ傷むから・・・という気持ちも分かりますが、ここはちょっと贅沢してみてはいかがでしょうか?

ちなみに、今回のお値段は・・・
G3000(125周年記念特別反)シングルジャケット
 43,000円 
仮縫い付きフルオーダー
 20,000円

合計 
 63,000円 
(消費税込み)
です。
通常価格35,000円。記念反を使用した時のみ+20,000円になります。
週2名の限定。詳細はこちらまで
こんなジャケットなら、愛着を持って25年着続けられそうです。
実物は当分 東京店の店頭に飾っておきますのでご来店された際には是非ご覧下さい。
大阪店の方は、、、近々行う葛利フェアーの期間中展示します!この生地も葛利毛織製ですから♪)