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オーダースーツのヨシムラ
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 SHOPMASTERこの春のジャケット
 桜の花も咲き始め、一年中で一番心地よい季節になってきましたが皆さんお元気でしょうか?
震災で辛い思い嫌な思いをされた方も目線を下にばかり下げているとどんどん暗くなりますから、視線を少し上げて桜の花など愛でてみるのも良いのではないでしょうか?

さて
そんな外に出たくなるような季節ですので、今月はこの春 私が自分用に仕立てたジャケットをご紹介したいと思います。

どんなジャケットを仕立てたかというと、、、
リネン(麻)のジャケット
麻のジャケットなんて春先にはまだ少々早いですが、夏のカジュアルジャケットとしてはそんな珍しくもない素材。
でも、この春の私は色んなことを考えながら、このリネンでジャケットを仕立てることにしました。

そこで出来上がり等をご紹介する前にどんなことを考え、どんな素材を選んだか?などをご紹介してから、出来上がりを紹介したいと思います。

■ どんなことを考えたか? ■
 店のSHOPMASTERとして仕立てるスーツ(ジャケット)は大変重要です。
何故かと言えば、私のファッションを見てお客様が店の感性を判断されるから
とはいえ、保守的な私にはあまりモード過ぎるファッションは個人的に好きではないだけに、いつもいつも悩みます。

そして今シーズンどんなスーツ(ジャケット)を作ろうか?と考えた時にポイントにしたことは次の点。

1.クールビズも定着した中、クールビズで使えるものを作ろう!
>>> クールビズも導入されて5年。定着してきました。
昨今は世界的なビジネスカジュアルの流れもあり、夏場はジャケパン姿が増えてきています。

2.ありきたりな紺ブレはNG
>>> クールビズも定着してきたということは、そろそろクールビズ更新需要も出てきたと言うこと。
そんな中で、ありきたりな平織りの紺無地×メタルボタンなんてもう流行りません!

3.出来ればネイビーでないジャケットがGOOD
>>> クールビズについて当社のこれまでの提案は2〜3年前から『ありきたりな紺ブレ』から『カジュアルテイストを加味した洒落たネイビージャケット』に映ってきています。
でも、その先を行くのがプロですから今回はネイビーではないジャケットでクールビズ提案をしよう!

・・・と、こんなことを考えていたところ、、、
東北関東の地震が起きたのです。

そしてファッション業界への震災による影響を色々考えました。
消費低迷、自粛ムード、電力不足etc...

考えて考えた結果、計画停電でエアコン設定温度が上がるのが一般的になり、これが我々の着る物に大きく影響するだろう。
それなら涼しい素材→麻素材以外に考えられないと考え、素材をリネンにすることにいたしました。


■ どんな素材を選んだか? ■
 上述で
リネン涼しい素材と申しましたが、リネンジャケットなどお持ちでない方はあまり詳しくないと思いますので、リネン(麻)の素材特性についてご説明いたします。

リネンとは植物繊維である麻を原料とした繊維で、麻の中で高級な物をリネンと総称します。
一口で麻と言っても麻袋の麻から高級なアイリッシュリネンなどもありますから素材の品質は千差万別です。
(ちょうどシルクが養蚕農家が育てている高級シルクもあれば、そこら辺の蛾の繭もシルクであるのと同じです。)

簡単にクオリティーの違いを紹介するとこんな感じでグレードが分かれます。
(高級) リネン   麻   亜麻  ヘンプ (廉価)
素材特性として麻は繊維の内部が中空になっている(イメージで言えばストローのような状態)ため、軽くて通気性の良いことと、皺が付きやすい所が最大の特徴です。
特に皺に関しては綿と比べても皺が付きやすく、この素材を好きになれるか否かは皺とどう付き合っていくかに関わってきます。

また、近年は麻の皺特性を敬遠する消費者向けに、擬麻加工という麻に似せた素材感のポリエステル製品も増えています。(あるいは麻との混紡)
こういった素材は純粋な麻よりは涼しさは劣りますが皺になりにくく使い勝手が良いため近年特にレディースで好まれる素材です。

こうして私が選んだのは、メンズのカタログには掲載していないリネン100%の素材

生地の画像をご覧いただいていかがでしょうか?
基本の色合いは淡い赤紫のリネンです。
写真では分かりづらいですが、シャンブレーといって少し玉虫色に表面変化する微妙な作り。
縦糸と横糸の糸色バランスが異なるとこういった色合いになりますが、柄もうっすらとヘリンボーンが入っていてとても色気のある風合い・色合いです。

なかなか良いでしょう?!
どうしてカタログに掲載しないの?って声もあろうかと思いますが、実はこの商品レディースで採り上げている商品なんです。
どうりで女性的な微妙なトーンの色合いですよね。

でも、レディースの生地というと耐久性が劣るんじゃない?
・・・とお考えになる方もいらっしゃるかも知れませんが、ご心配には及びません。
麻は麻袋に代表されるように繊維としては非常に強い繊維ですから、メンズ・レディースどちらで使っても大丈夫なのです。(色合いなどは別ですけどね、、、)

ですから、こういった微妙な色合いの生地をお探しの方はレディース素材からチョイスしてみるのも面白いかも知れません。

・・・ということで、色々考えて今シーズンはこの生地に決めました!

■ それではどんなデザインに? ■
 生地が決まったら次はデザインです。
皆さんだったらどんなデザインにしますか?
変わった色目の生地、派手な柄だから変わったデザイン?

いえいえ、私も40を過ぎていますからそんな奇抜なデザインにはいたしません。
私ぐらいの年齢の人は色合いが派手な物を使うならデザインはシンプルにするのが良いと思いますよ。

そこで、今回はこんなデザインにしてみました。もちろん仕事で使える仕様です。
 生地
66147-1(レディース生地 ピュアリネン)
 基本デザイン  
シングル2つボタン
基本デザインはややショート丈のシングルジャケット。
ウエスト絞りも少し強めに入れましたから結構ドレッシーです。
 ベント 
サイドベンツ
 裏仕立て 半裏仕立て
夏仕様ですから大見返しも...と考えましたが今回は計画停電を考え一番涼しい半裏で!
大見返しは表地仕様部分が多いため思ったほど涼しくなりません。
 胸ポケット 切りポケット 胸ポケットは通常の切りポケット
 腰ポケット アウトポケット 
腰ポケットはカジュアル色を出してアウトポケット。夏物はフタなしが主流です。
 裏地 ネイビー 
ネイビーの裏地はともすると色気が強くなりすぎる赤紫の雰囲気をグッとシャープに引き締めます。
 ボタン 艶あり鼈甲(淡色)
 ポイント 全体の身幅の細さに合わせて袖幅を細くアームホールも小さく

・・・と、こんな感じに決めましたが、どうでしょうか? 少しイメージできましたか?

■ 仕上がりは・・・ ■
 それでは、こうして仕立てた私のジャケット。
さぁ、出来上がりの紹介です。こんな感じに仕上がりました。

ご覧頂いていかがでしょうか?

< 全体写真 > 

全体画像をご覧いただいていかがでしょうか?
何とも言えない淡いパープルの色合いですね。
こういった色合いはなかなか写真では雰囲気が分かりませんので、東京店へお越しの方は、当分飾っておきますので是非ご覧下さい。
< アームホールの狭さ > 

 アームホールは細めにしました。
ジャケットは一昔前までは着やすさや気回しの良さを優先してゆったり目に作ることが多かったのですが、今はお洒落の一環としてジャケットをお召しになることが多いですから、最近はタイト目にします。
そしてタイトなフィッティングかどうかは、胴回りの太さも重要ですが、アームホールの小ささ、袖幅の細さなども見た目に大いに影響します。

< 腰ポケット > 

 腰ポケットはカジュアルテイストを出したい場合はアウトポケットが良いでしょう。
どうですか?
胸にチーフをしたり、スカーフを巻いたりしたらお洒落になりそうですね...
< 裏地とのバランス > 

 裏地は夏物としてはやや重めの色合いの紺。
正直もっと重く見えるかな?と不安もありましたが、やはりそこは表地が青紫で紺と近似色ですからまとまりは良いですね

いかがでしょうか?
このジャケットですとグレイの無地のパンツですとちょっと似合わないと思いますが、ホワイトデニムなんかでしたら凄くお洒落な感じになると思いますし、淡いピンクのリネンシャツなんて相性良さそうですね。
そこで少々コーディネート例などご紹介しましょう。

■ コーディネート例 ■
 今回は自分用のジャケット言うこともありますので私物を使ってコーディネートをしてみました。
本当はホワイトデニムなんかで合わせたかったのですが、今回はやや濃い目のデニムで合わせています。
後ろ姿もイイ感じ
ご参考:
< シャツ >
伊カンクリーニのPIAVEの白無地
フランス綾で光沢感が強いのが特徴
ビジネス仕様のワイドスプレッドですが、このシャツにはデュエボットーニか、イタリアンカラーのデザインが良さそうです。

< デニム&ベルト >
バナナレパブリック製。
昔、ハワイに遊びに行ったとき購入。
その他、こんなコーディネートが涼しげで良いと思います。

< シャツ >
伊カンクリーニのリネンシャツ 15,800円
これを開襟シャツにしたり、台襟の高いイタリアンカラーなんかにしたら良さそうです。

こちらはつい先日追加仕入した商品です。詳細は シャツサイト まで

< ボトム >
ストレッチするコットンのオフホワイトパンツBL9313(画像右上) 16,800円

どうでしょうか?コーディネート例も少し挙げてみました。

従来基準のクールビズでは『おいおい、オマエ仕事でその格好はないんじゃない?』って言われたかも知れませんが、今年の夏は冷房が効かせ無くなる分、今年は開襟シャツが許されるようになると思います。
だからこそ、開襟シャツに合わせて着れるジャケットとしては最高に良いのではないでしょうか?

これがお堅い業界で認められるようになったら日本のファッション界は活性化するんじゃないかな?
それこそ復興支援につながる!
・・・ということで、今夏はSHOPMASTERのこの春夏のジャケットをご紹介してみました。