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オーダースーツのヨシムラ
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中国縫製スーツはどうやって来る?
 最近、ビッグヴィジョンの仕事が多くなりヨシムラのお客様の接客をするケースが少なくなった前SHOPMASTERの吉村。
先日、久しぶりに店頭に立ちお客様と色々と会話していたところ...
吉村さん、最近何やってるの?
ブログだけでは分からないから教えて!
・・・というお声をよく聞くようになりました。
そこで、、、
せっかくビッグヴィジョンを通じてこれまでにない経験を積んで、日々悪戦苦闘?しているのですから私の近況報告を兼ねて?色々な情報を発信していこうと思います。

中には(本稿のように)ヨシムラには全く関係のないこともありますが、業界話としてお読みいただければ幸いです。

■ 中国製スーツはどうやってくるの? ■
もはや当たり前のことですが、既製品でもオーダースーツでも最近は廉価な商品はほとんどが中国縫製です。
でも、一般消費者の皆さんはそれがどんな風にやってくるかあまりご存知ありませんよね。

えっ?空輸船便でしょう?
えぇ、それはそうなのですが、問題はその荷姿なのです。

精密機械とか、高価な物でしたらそのまま厳重に梱包すれば良いのでしょうけれど、私達の取り扱う衣料品は非常にカサばりそのまま運送したら多大なコストが掛かってしまうそんな類の商品です。

確かにそうですよね、、、
船便でも空便でもハンガーに掛けてスーツを送っていては大変なスペースを使いますからコストが割に合いません。

それではどんな風に送ってくるか?
それは・・・ ドライパック という手法。
簡単に言うと、布団圧縮袋のようなものです。

運送コストを下げるため、これでペチャンコにして容積を減らし、送ってくるのです。

■ どんな荷姿なの? ■
ドライパック?、布団圧縮袋?と言われてもピンと来ない方に、先日北京工場を視察した際に、私自身のジャケットを同じように送ってもらいましたからぞちらをご覧下さい。
ご覧いただいていかがですか?
1着のジャケットが厚さ1.0cm位の薄さに圧縮されています。

ちなみにこのジャケット。
結構高級で、伊ゼニア社製のカシミヤ100%ジャケット。(イージーオーダー)
私のお気に入りです。

実はこれ、先日ビッグヴィジョンの工場見学で北京に行った際に着用していたジャケットですが、中国製品がどのように圧縮、梱包され、それがきちんと復元できるかを確かめるため自らのジャケットで試してみたのです。
読者の皆さんも、この辺を知りたいでしょう?(決して帰りの荷物を軽くしたいからではありませんヨ!(^^;)

それでは、ここから圧縮された袋を開封し、どう復元するかを試してみましょう。

蛇足ですが、、、
 工場の人に勝手に開けられないように、ここまで書いて送ってもらいました。日本語ですが『禁開封』は分かるでしょう!
 やる時は徹底するのが私流です?!

■ 開封した物を試着すると ■
日本に帰国して数日後、忘れかけていた頃、ジャケットは戻ってきました。
そして、梱包された袋からジャケットを取り出すと...
気になったところは・・・
・3つ釦中掛けのジャケットなのに全ての釦が留められていたこと。
・折り畳まれているためどうしても皺が出来ていること。
・襟周りのプレスなど立体感を失っていること。
   でした。

そりゃ、そうですよね...
これだけペチャンコになっていたんですから。
釦もやはり全部留めないと綺麗に畳めないのかな?

そこで、とりあえず、開封しただけの状態で着用してみました。
う〜ん、、、やはり2つ折りで送られてきたために付いたお腹周りの皺と、襟のプレスがペチャンとしたところが気になりますね。

■ それではどうしているのか? ■
こんな状況ではもちろんお客様には出せません。
それではどうしているのでしょうか?

それは・・・ 国内で再プレスをしているのです。
ビッグヴィジョンの場合はこれを青森の縫製工場で再プレスをしています。

でも、、、一度ここまで皺が付いてしまった物が本当に綺麗になるのでしょうか?
そこで改めてプレスしてみました。

すると... 見事綺麗に復元しました!

いかがでしょうか?
廉価な中国製スーツだからダメなんじゃない?という声も聞かれそうですが、少なくとも最終の仕上げプレスは国内で行っていますからこの点では安心ですね。

皆さんも是非お試し下さい... とは申せませんが、皆さんの周りに流通している中国製スーツ類はこんな風になって日本に送られていること、ご存知でしたか?

■ それとは違う問題も・・・ ■
 今回は、中国製品の荷姿やそれに対するプレスについてお話ししましたが、実は中国製品で決定的に難しいところが1つだけあります。

それは、、、機械の精度でも人間の技術でもなく、気候の問題 です。

これは今回は出張した時期が日本も中国も比較的乾燥している秋でしたから再現やテストは出来なかったのですが、縫製している土地と着用している土地が違う場合、湿度による伸縮率の差があるものはどうしても乾燥・湿潤によってピリング(引きつれ)を起こしてしまうのです。

つまり、生産した場所(国)では全く問題なかったスーツでも、消費する場所(国)で出来上がりを見てみると...
襟のステッチや脇の縫い合わせなど、表地と糸との伸縮率の差で引きつれがでることがあるのです。

でも、これは中国だからの問題ではなく日本国内でも時々起こることで、特に梅雨時などは縫製したときが湿度が高く、お客様に納める時がカラカラ天気だと同様のことが起こります。

ただ、中国は概して乾燥していますし日本は湿潤ですからこの差が往々にして製品に出てくることがあるのです。
この点はタイミングもあり今回は検証できませんでしたがいずれまた機会があったら皆さんにご紹介したいと思います。

ですから、この点は技術力不足でないことだけは記憶に留めて置いてください。

■ おまけ:プロのこだわり ■
 上述、凄く簡単に書いておりますが、実はヨシムラ的にはプレスはこんな所が重要だと考えております。
それは... キチンと所定の位置でプレスがなされているか?

最近は2つボタンが主流になっていますから気にならない方も多いと思いますが、少し前に流行った中掛け3つ釦でこれを確かめてみます。

襟には返り線があります。
 例えばそれは
  ・襟のR(丸み)の取り方
  ・襟ステッチの表裏が切り替わる場所
  で分かります。

先述のジャケットの襟の立ち上がりを撮影してみると...
いかがでしょうか?
ステッチの表裏が変わっているところ(ペン先が指すところ)がお分かりになりますか?

これがスーツの本来の設計図に書かれた襟の返り線なのです。
プレスもこれに綺麗に合わせなくてはもちろん良い仕立てとは言えません。

でも、これって、中国製製品でも実は日本国内の仕事なんですよね...

皆さんも機会があったらこんな所をチェックしてみると仕立て(プレス)の善し悪しなどが分かるかも知れません。
こちらは同様のことがクリーニング屋さんの上手下手を判断する材料にもなりますヨ!

以上、今回は中国製品の荷姿とプレスについてでした。