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オーダースーツのヨシムラ
お客様!ありがとう!
 似たような生地ありました! 
いよいよGWも目前に迫ってきましたが皆さんご予定はいかがですか?
今年は連休の谷間がありますが、それでも長いお休みの会社では9連休の所などもあるのではないでしょうか?羨ましい...

当店は土日完全営業とは言うものの祝日はお休みを頂いておりますので、GW期間中は次の日程でお休みを頂きます。(これじゃ完全営業じゃない?スミマセン。)

 GW期間中の定休日4/29〜30  5/3〜5
  GW谷間の5/1・2は営業、5/1はサービス企画の発表もあります

さて、なぜか?季節の話からGWの営業へ話が移ってしまいましたが今月の『お客さまありがと〜う』コーナーでは先月他店で購入されたスーツと同じ生地でベストだけ出来ないか?と要望されたYさんの仕上がりをご紹介いたします。

他店で買ったスーツ(生地)と同じもの〜?
これって、普通は出来ないことです。

何故か?って???

それは・・・
1.メーカーは毎年新しい色柄を出すのがファッション業界だから
2.メーカーによっては既製品ラインとオーダー向けラインで品質を変えるから
3.同じ企画でも染める釜が変われば微妙に発色が変わるから
...などなど業界ならではの色んな問題があります。

そこでYさんへは十分?牽制した上でご相談をお受けするとYさんの希望される生地はこんな物でした。
  メーカーは伊ポリカルポ(スーツのメーカーはポールスミス)
  生地は平織りの黒

・・・ということで、ポリカルポ社の生地は幾つか当社でも取り扱っていますが黒無地がなくドンピシャの商品はダメでしたが、生地自体が平織りのプレーンな黒ということで、ポリカルポ社と地理的にも近い同じく伊 ビエラ地方のメーカーであるロロピアーナ社やキャノニコ社の物からお選びいただき、何とか遜色ない素材を見付けお仕立ていたしました!
 ...というのが前回までのストーリー

さて、どんなスーツ?(ベスト)になったでしょうか?
オリジナルのスーツと比較しながらご紹介しましょう!

オリジナルはこんなスーツでした。>>>
どうでしょうか?
画像では分かり難いですが生地はプレーンな黒無地ですね。
一方で、特徴的な所は「」でしょうか?変わったタブのような物が付いているのが特徴です。

ご注文にあたっては、折角ジャケットが変わったタブ付きだから、出来ることであればベストにも同じタブを付けたい!とのことでしたので、ちょっと頑張ってみました。
いかがです?
スーツの上着と同じタブがベストにも付いているでしょう?!
これは工場にお願いしてスーツからタブの型を抜いてそれをベストのサイズにアレンジして付けたんですよ!
分かりにくいですがタブの上端が緩やかにカーブしていますがこの辺結構裏の始末が大変で苦労したと思います。

こんなタブ付き上着を脱ぐと、ベストにもタブが付いているなんて!洒落てますね。
>>
ンンッ、なかなか面白い、いかにもポールスミス的な遊び心を演出できました。

ちなみに見本服はポールスミスらしい遊び心が随所にありました。例えばこんなところ....

前身頃の半分だけ黒地に白の水玉模様
オシャレだな...と思いつつも、キュプラの裏地は上から水玉などのプリントが出来ないのでこのような裏地は物理的に難しく当店では不可。

Yさんからはベストの他に別の生地でスーツのご注文も頂いておりましたから、スーツの方ではこんなアレンジを加えました。

裏地は・・・
上述の通り水玉裏地がないので、ここはベースの裏地は生地の色に合わせてベーシックにしてウチポケットの玉縁だけ目立たすように白の裏地でお仕立て。

どうでしょうか?
結構白が浮き上がって綺麗ですね。
ポールスミスとまでは行かなくてもかなりオシャレです。

ちなみに腰ポケットのフラップ裏まで白にして、何かあったときチラッと白の裏地が見えるようにしてみました。

お決まりのボタンホール糸色変更
ポールスミスというと一番多いのが袖ボタンのボタンホール糸色変更。

この辺もアレンジを加えてみました。
今回の色目は青紫
生地のストライプがブルーでしたのでその相性も良いですね。

その他パンツ
ちょっと変わったこだわりでは、パンツの持ち出し部分。

長さ6cmとちょっと長めな上、2つホックを付けるタイプです。

全体像は・・・
忘れていました。
全体像はこんな感じです。

どうでしょうか?

全体的にオリジナルのポールスミスよりはスリムさが少し足りないような感じですが、サイズを合わせるとこんな感じになってしまいました。

さて、
こうして仕上がったスーツですが、お納めはどうだったでしょうか?

Yさんは静岡にお住まいでしたので直接ご試着は頂けなかったのですが、スーツをお送りするとこんなご感想を頂きました。
07.04.14 件名:ベストとスーツ到着しました!
吉村さん
早速のご発送、ありがとうございました。
家族が寝静まった後、一人ファッションショーをしておりました!
感想をうまく表現できるかわかりませんが、インプレをお送りします。

 ベストについて
箱を開けて最初に思ったのが、よく同じような生地を探してくれたな〜、ということです。
手触りや色はほんのわずかに異なりますが、織りなど全く一緒で、別注だと知らなければ全くわからないと思います。
黒一色とはいえ、おそらく膨大な在庫から選んでいただいたかと思うと、感謝の気持ちで一杯です。
襟の作りは見事の一言です。
スーツの襟を見事に再現されており、完璧にイメージ通りでした。
上着のVゾーンとベストのVゾーンとのバランスもイメージしてお願いした通りの仕上がりでした。
ステッチもスーツと全く同じように入っていますし、工場の方々の技術の高さをうかがうことができました。

ただ、ひとつびっくりしたのは、採寸して体にぴったり合うベストを着ると、他が逆に借り物のように見えて(思えて)しまうことです。
身体とのマッチングが良くても、スーツ(特にパンツ)とのサイズ的な全体のバランスがとれるかどうかは、もともと別々につくったものですので、当たり前といえば当たり前かもしれませんが、このあたりは難しいところですね。
ただ、デザインのテイストなどは、スーツを預けてしまえば全く同じように作って頂ける訳で、3ピース好きの私としては、本当に助かりました。
面倒な話を長時間かけて聞いていただき、良い物を作っていただき、本当にありがとうございました。

オーダースーツというものは、こういうふうにコミュニケーションを重ねてできるものなのだな、と実感できました。

また、吉村さんがスーツ作りにおいてコミュニケーションを大事にされている方だということもよく理解できました。
私が吉村さんにベストとスーツをお願いしようと思ったのも、様々なお客さんの無理難題に誠心誠意応えている「いらっしゃ〜い」や「ありがとう!」の記事が決め手になったと思っています。
是非これからも楽しい記事を期待していますので、がんばってください。

ベストづくりでご苦労された点、いろいろあるそうですが、ぜひ教えてくださいね。
私のインプレではせっかくのご苦労に全然気づいていないようで申し訳ないのですが...

 スーツについて
上着の着用感が最高にいいですね。
肩の補正が効いているのだと思いますが、今まで感じたことのない軽さと楽さです。
これがオーダーのいいところだな〜、と実感できました。
パンツについては、欲を言えば膝から下がもう少し細いほうが好みですが、いつもウエストを詰めなおししていた私としては、最初からジャストフィットのパンツはそれだけで感無量といったところです。 ( 静岡県 Y )

 ★☆★ 東京SHOPMASTERより一言・・・ ★☆★

Yさん、過分なご感想を有り難うございました。
ベストの生地の方は、ポリカルポと全く同じ物は入手できなかったので困ったのですが、優先順位として、(黒無地)組織(平織り)産地(伊ビエラ地方)で調べたところ、キャノニコ社、ロロピアーナ社、ゼニア社などがピックアップされその中10種ぐらいを調べたら、直ぐ良さそうなのが見つかりました。

ですから、倉庫の奥底から全てをひっくり返してまでは手間は掛かっていませんのでご安心下さい。(笑

また、苦労話ですが、、、
そうですね、 画像を撮り損ねてしまいまったのでUpできませんでしたが今回は衿のタブがやはり一番苦労したようで、タブの付いたスーツをお預かりしてそこから型を抜く訳ですが、上着とベストでは全く同じ物は通用しませんので、スーツのタブをベスト用にデフォルメするのが相当難しかったと思います。
また上述しましたが、あとは曲線部カーブの始末でしょう。
この辺は工場の職人さんに私からも御礼を申しておきました。

...と、こんな感じのメールをYさんへはお送りしたのですが、実は頂いたYさんからのメールに続きがありました。
先程のメールの続きです。

(「ありがとう!」には以上の部分だけ使ってください)

でもひとつ、次回お店へ行ったときで結構ですので、見ていただきたい点があります。

それは・・・前肩補正(リラックスした状態で、腕が前に出ている)をしていただいたのだと思いますが、補正を入れすぎてないか、ということです。
自然に立ちますと、肩の付け根から腕にかけて、袖の後ろ側にシワ、というより波打ちができます。
逆に袖がきれいにすっと伸びるには、腕を体から相当離さないと(手のひら部分で10センチ程度)袖が真っ直ぐになりません。
腕の後ろ側の布がかなり余っている、という感じです。

*******************************
さて、私にとって初めてのオーダースーツだった訳ですが、今後のよりよいお付き合いのために、吉村さんを見込んで(←ここが大事!)、思ったことを書かせて頂きます。
決して批判ではなく、自分自身の反省も踏まえてのことですので、反論やご意見、筋違いのことなどがありましたら、ぜひお知らせください。

スーツを着たときの第一印象です。
正直言って、「野暮ったい」と思いました。
自分なりに「なぜか?」ということを考えてみると、頭の中のイメージを全て伝えきれていなかったのだと思います。
素人の目につく所だけはお話できたと思いますが、全体のイメージはやはり雑誌などの写真が必要だったと思います。
ああして、こうして、は注文通り出来ている訳ですが、色々やりすぎちゃったかな〜、というのが最初の印象でした。

あとはヨロシク」これがクセもので、自分としては勝手にイメージ通りのものが出来ると誤解してしまいます。

ところが自分はヨシムラスタンダードを知りませんし、吉村さんは私の「ヨロシク」がどの程度なのか知る由もないわけで、そのためにあれだけの時間をかけても、100%の満足に至らないのは、今回のオーダーで、スーツというものの奥深さを痛感しました。



 ★☆★ 東京SHOPMASTERより一言・・・ ★☆★

Yさん、私の事を気遣いいただきネガティブな事を本稿から除外下さるようなご配慮ありがとうございました。
ただ、良い情報だけを出すのではフェアーではありませんので、自身への反省も踏まえ掲載したいと思います。

ご指摘いただいた体型補正とスーツの印象について次のように考えYさんへもお返事いたしました。

■ 体型補正 ■
体型補正の問題は試着姿を見ることが出来ませんでしたので、これは断定的に申し上げられません。
でも、着心地が良いにも関わらず、袖にシワが寄るのでしたら、それは多分・・・袖付けの角度の問題ではないかと思います。

と言うのも、採寸の際にお客様が前肩かどうか確認しますが、お客様は緊張で背筋を伸ばしたり手を真下に下げすぎたりすることはありますが、前肩を強く・弱くは出来ませんので、このミスジャッジはないかと思います。(あくまで推測ですが...)

一方で、袖付けの角度(=腕の位置)は採寸時に緊張のため「気を付け」状態になる方もいらっしゃいますからこの可能性が高いです。

でも、こればかりは分からないので、次回東京へ出張の際はお仕立てしたスーツでお越し下さい。

■ スーツの印象について ■
これは正直堪えました...
日頃自分で絶対そうしたくない!と思っていることだったからです。
野暮ったい
感覚的な言葉ですからお客様お店側双方が正しく理解するには非常に難しい言葉です。

ただ、頂いたメールから改善のヒントが幾つか隠されています。
それは、
> 全体のイメージはやはり雑誌などの写真が必要 というコメントや、
> 「あとはヨロシク」これがクセもの という言葉です。

Yさんのご注文では確かに話の中心がベストでした。
ですから、どうしても私の注意もスーツの方100%とならなかったのかも知れません。
また、同じ事はYさんにも言えて、Yさんもベストが中心でしたからベストのオーダーを済ませて安心してしまい、「あと(のスーツ)はよろしく」になってしまったのでしょう。

Yさんのオーダーでは見本服(ポールスミスやBurberry Black Label)を見ればある程度お客様のスーツ観は分かります。
ですから、画像のように私の仕立てた物はそこまで酷い野暮ったさでは決してなかったと思います。
でも、やはり何かが足りなかった。
これは大いに反省しなければなりません。

今回のYさんからのご注文はひとえにYさんのお人柄に救われました。
次回以降は、今回の反省を活かして次のご注文にお応えしたいと思います。

□ 書くべきか、書かざるべきか.... □
本稿の最後の部分は掲載すべきかどうか悩みました。かなりネガティブな情報ですから...

でも、のようなことは、当店に限らずどこのオーダー店でもごく普通に起こっている話です。
ファッション誌に毎号掲載されるテーラーでも、何とか賞を受賞したこの店でも、チェーン店でも、です。
違いは、それを表に出すか、出さないか、です。
当店はこの点では商売が大変下手です。言わなければ良いことですからね。

どんなご注文でも100点満点というのはありません。
80点が合格だとすると、頑張っても最初は85点位ではないでしょうか。

今回のYさんからご注文も人柄に救われたとはいえ、80点のラインは何とかクリアしていると思います。
あとは100点までどれ位改善余地があるか?これが大切なのではないでしょうか。

お仕立てしたスーツの弱点を見つけだすこと、そしてこれをお客様と確認し合うこと、、、
これは次のご注文で85点を87点に、90点にするためにはどうしても必要な作業です。

85点のスーツで、これで笑顔でパーフェクトです!と言ってしまったら、、、その先がなくなってしまいますから。

ネガティブな情報を敢えて掲載したのは当店がこういった考えのお店だからです。
どうかご理解下さい。
また読者の皆さんもどうか良いことだけ言うお店の“本質”を見抜く眼を養ってください。

ご感想メール Part2
07.04.20 件名:お振り込みしました。
吉村さん
ベストとスーツをお願いしたYです。
木曜日に東京三菱UFJ銀行に残額を振り込みましたので、ご確認ください。

先日は丁寧なご回答、ありがとうございました。
今週、2回ほど出勤に当たりスーツを着用しましたので、
実戦投入の印象をお知らせします。

肩に感じる軽さはさすがでした。
ワンサイズ上の上着を着ているようなゆとり感があり、それでいてぴったりフィットしているのは、やはりオーダーならではの恩恵と思います。

パンツはタイトとはいえ生地がうまく滑りましたので、階段の昇降でも問題ありませんでした。
座ったときのことを考えると、腿にはもう少し余裕をみてもよかったかもしれません。

膝下をもう少し細く、との希望を前回のメールで書きましたが、ここは全体のバランスをみながら、次回はご相談させてください。

アームホールの大きさと、腕の後ろのだぶつき感はやはり気になります。
どちらかといえばアームホール〜腕部分を細く絞って、袖口には逆にフレア感を出してもよかったかと思います。

野暮ったい」と少々失礼な印象を申し上げましたが、周りの反応は上々でした。

「なぜか分からないけど、今日のスーツはなんだか違う(良い意味で)」という意見ももらいました。
後輩にも「ボタンも良いのを使ってますね」と言われました。

自分としては思い切りトレンドを追いかけてもよかったのですが、吉村さんとお話している時、
「あまり流行を追いすぎると、ご年齢的にも見苦しいところもありますし...
と言われました。
「見苦しい、って言われちゃあんまりモードにふった希望は出せないな」
「この歳でキャサリンハムネットのピタピタのスーツも着てますなんて言えないぞ」
(作者注:Yさんは30代後半)
「やっぱり仕立て屋さんには、昔ながらのセオリーを崩せないのかな」
...と思い、あまり主張をしなかったのがマズかったと、今にしてみれば思います。

この時に、
「構わないんで思い切りやってください」
「PSやバーバリーだけじゃなくて、キャサリンハムネットも着てますんで」
...とでも言えば、吉村さんも「ある種の邪念」にとらわれず、思い切った仕様に迷わず踏み込んでもらえたのかもしれません。

とはいうものの、着心地の良さと、正調な感じの中にもシェイプをきつめに入れた感じ、生地にも主張があって、大変気にいって着用しています。

上記のような話も、直接雑談すれば何てことない話なのですが、メールにすると少々重めになってしまいますね(笑
お話ししたいことを一方的に書いてしまいましたが、またお店におじゃましたときに、色々とお話をさせてください。
次回の冬物のオーダーまでに、自分も勉強しておきます。 では。(静岡県 Y)

 ★☆★ 東京SHOPMASTERより一言・・・ ★☆★

Yさん、ご感想メールPart2ありがとうございました。
このメールで、自分としてもWeb向け原稿としても随分救われました。(本稿の他のお客様から見た反響、どうなることやら...と少々悲観していたもので。)
私も自分の持てる物を出し切って接客していたつもりでしたが、「見苦しい...」などと失言していたんですね。スミマセン...

でも、次へ続くご注文となりましたので次回冬物も是非よろしくお願いします!。