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オーダースーツのヨシムラ
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 メンズの美脚パンツとは?
そろそろ蒸し暑い時期になってきましたが、こんな時期皆さんはどんな格好をされますか?
ジメジメするから...』『暑いから。。。』と皆さんよそ行きを除けばたいていがパンツ+シャツ姿が多いのではないでしょうか?
こんなパンツ姿の時、皆さんはお洒落のポイントをどこに置きますか?

シャツの色柄・ネクタイ?。。。

夏ですからブルーのシャツや爽やかな水玉のネクタイ?こんな方も多いのではないでしょうか?
これはこれでコーディネートを語る上で是非語ってみたい話題ですが、今回はこのポイントをパンツのシルエットに注目してご案内したいと思います。

イメージとしては >>> 暑い時期のお昼休み、ランチを食べにちょっとオフィス街を歩くとき
土日にちょっとお洒落をしてノータイながらもプレスの効いたパンツを履きたいとき。
...こんなイメージです。

こんな時、周囲からパンツのシルエットが注目されるってこと、気になりません?
いかがでしょうか?そこまであまり意識される人は逆に少ないのではないでしょうか?

実の所、このパンツのシルエットについてはレディースでは非常に意識が高い反面、逆に男性は非常にこの点に対し軽視されている方が多いです。
レディースでは注目されてもメンズであまり意識されないのは、ひとえにメンズは上着あってのスーツで上着が中心にスーツ論が語られるからですが、パンツもどっこい奥の深いものです。

そして

このメンズでのパンツが今業界で非常に(!)注目されています。その名も『美脚パンツ
(多分にコマーシャルベースで販売増を求めるための切り口としてですが...)

それではこの画像をご覧下さい。
これは大阪店へ出張に行った際オン●ー▲さんのお店(本町)の前を通りすがった時の写真です。
皆さんお持ちのパンツと比べて随分スッキリした印象だと思いませんか?
全体に細いのはもちろんですが特にヒップの部分がスッキリしているのが印象的です。
ボディーに着せるというのはある種理想的なイメージだけの物になりがちですが、もしこんなスッキリとパンツを履ければ格好良いですね。

そこでこんな美脚パンツを仕立てるためのエッセンスをご紹介します。

でも、その前に基礎知識を知っておかないといけないので簡単にパンツデザインを決めるファクターについて説明しましょう。

パンツのデザインを決めるファクター
 オーダーでは概ね次の1〜7の寸法でパンツのシルエットを決めていきます。
<1>股上
>>> 股上は股の付け根から上までの長さ。(曲線ではなく高さの差です。)身長である程度の長さが決まります。
また、お腹の出具合とも微妙に影響しあい、ズボンのベルトをどこに置くかでも変わります。
美脚パンツという観点からはやや浅めのパンツが良いでしょう。
ただ浅すぎる股上は腰の部分から下着が見えますので女性の見せパンならいざ知らず男のそれはあまり見れた物ではありませんね。

そして注意して貰いたいのがヒップとのバランスで画像のように生地がたるむケース

一般に股上は前の股上も後の股上も同じ長さにします(つまり水平ということ)が、ズボンの履き方如何では画像のようなシワが出てしまいます。

こんな場合は、ヒップの肉が少ない人や前の股上を上げる癖がある人などに多いのですが、
前者の場合は後述の平尻補正を、後者の場合は後股上を短めにして仕立てることでこのシワが目立たないようにします。

BEFORE
AFTER
注> では画像に出たシワを否定していますがシワのないスーツはあり得ませんし、シワの出ないパンツを作ることはありえませんので、どうかある程度は割り引いてご理解下さい。
また画像は、きちんと仕立てた私の物をベースにわざとシワが出るように、BEFOREでは後股上を意図的に下げてシワを作ったものです。
逆にAFTERはやや必要以上に後股上を上げてシワを消したものです。

<2>股下
>>>股下は逆に股の付け根からパンツの裾までの長さ。(パンツの丈=股上+股下
股下は足の長さで決まりますので基本的には長さの変更は出来ませんが、次のような場合には検討すべきファクターです。

●パンツ全体を細くするとき >>> こんな時は裾口に靴が当たり見苦しくなるため、通常より1.0センチ程度短くすることもあります。
美脚パンツという観点からはやはり全体的に細身ですからパンツの丈も短めですね。

<3>ヒップ
>>> これも個別的な要素で決まってしまいますが、ヒップの大きさとタック、ワタリ巾は全て微妙に関係しあっています。
また体型補正の所にも関係しますが、ヒップの部分に不必要な弛みがあるとパンツ全体を野暮ったく見せますし、逆にゆとりがなさ過ぎるとお尻に喰い込みみっともないです×××
ズボンのお尻にお財布を入れるなんて美脚的にはもっての他です。


<4>タック数
>>> 下腹部にゆとりを持たせる機能がタックの役目です。
ですから、タックを減らせば全体にスッキリ見せることは可能ですが、別の角度からタックの役割を考えると、タックは「一番太いヒップ」から「細いウエスト」まで細めるためにその高低差を縮める役割を果たします。
ですからタックあり=ダボダボ(罪悪)、ノータック=すっきりして美しい(Good)という訳ではなく痩せ過ぎている人で、ヒップ(腰骨)とウエストの差が大きすぎノータックではウエストの細さまで絞りきることができずにタックが必要になるというケースもありますのでご注意下さい。

<5> ワタリ巾
>>> ワタリ巾とは太股部分の長さのこと。
太ければ座ったときゆったりしていますが、逆に見た目にはダボッとします。
今回の美脚パンツでは実はここが一番のポイントになります。
しかしこれは(後述しますが)失う物も大きいです。

★☆★ちょっと一言・・・ヒップとタック、ワタリ巾の関係★☆★
<3>〜<5>でヒップ・タック・ワタリ巾について簡単に説明しましたがこの3つ実はとても重要で、一般に次のような公式で3つの数値が決まります。
(この知識は知っておくと便利です。)
(ヒップ÷3)+タックの数=ワタリ巾
例:ヒップ102cm、2タックならワタリ巾は102÷3+2=36cm
※:何故「3」かといえばヒップを円、ワタリ巾を直径と思えばすぐ分かりますね。円周率です。
0.14相当の差は結構大きいですがこれはヒップと太股部分の場所の違いから来るものとでもお考え下さい。

ヒップはオーダースーツの場合は規定値(各自の寸法)ですから実はタックの数でほぼ太股の太さ(ワタリ巾)が決まってしまいます。
もちろんの公式は原則ですから多少の数値変更はもちろん可能ですが、それもやってもせいぜい±1.0cm位までが限界です。
(これ以上となるとカッティングの際かなり無理な線を引くことになります。)

<6>ヒザ巾
>>> ヒザの部分の巾です。一般にパンツはストレートタイプとテーパードタイプに分かれますがこの2つを決めるのがこのヒザ巾の違いです。
ストレートタイプはワタリ巾から裾口まで先細りになる中で、ワタリ巾からヒザまでを思いっきり絞ることで、膝下ストレートに見せスッキリ見せるのが特徴です。
逆にテーパードタイプはワタリ〜ヒザ〜裾口までを均等に絞っていくスタイルです。
体型的な問題もありますが、例えば私のサイズでは次のようになります。
ヒップ 96 96 -
タック数 2 1 -
ワタリ巾 34.0 31.5 ▲2.5
ヒザ巾 27.5 24.0 ▲3.5
裾口巾 23.0 21.5 ▲1.5
どうですか、ヒザを一番強く絞ることで随分スッキリしたシルエットになることが画像からもお分かりかと思います。
美脚パンツとしてはこの辺の視覚的効果が大切です。

<7>裾口巾
>>> 裾口巾は文字通り裾の部分の巾。
身長170センチ前後の標準体型の人でしたら昔の基準で24.0センチ、今でしたら23.0〜23.5センチ位が標準ですね。
これを細くすれば確かに細くなりますが、実は裾だけを細くしてもスッキリ見えないことも多々あり、美脚効果としてはヒザを絞る方が効果的です。

<8> その他(体型補正的要素)
>>> その他には体型的な要素も加味するとシルエットの良いパンツになります。
例えば座り仕事の多い人は概してお尻のお肉が減ってしまうので普通に仕立てると生地が余りますし、逆に若い人で運動をやっている人などはお尻がプリッとしていて生地が足りなくなることがあります。(専門的には出っ尻補正・平尻補正と言います。)

以上が、パンツを構成する各所の説明ですが、それでは先の画像を参考にメンズの美脚パンツのポイントを説明しますと次の通りです。

<見た目の特徴
1.ヒップがスッキリ
>>> 見た目にヒップがとてもスッキリしていますね。
これはオーダースーツではお客さま毎にヒップサイズを測りますがそのゆとり量を少し減らせばこんな感じになります。

2.ワタリ巾がスッキリ
>>> 画像では分かりませんが、2画像ともノータックか1タックでした。
?で書いたようにヒップを細くして、タックを減らせば先の計算通り太股のワタリ巾はかなり細くなります。

3.ヒザ部の絞りが強め
>>> ワタリ巾が細いのであまり感じませんが、パンツ全体を補足見せるためにはヒザ巾をグッと絞ると綺麗なシルエットになります。
ただ、画像のようにふくらはぎ部分のシルエットが透けると言うことは履き心地の点ではちょっとタイトすぎるような気がしますね。

のように美脚パンツは先述の要素を意識すれば細いパンツに仕上がります。
が、しかしこれで良いのでしょうか?
パンツのシルエットには理想的な体型の方を除けばウエストやヒップ、美脚したくても出来ない人もいるはずです。
そこでスタイルから入ったばかりに失敗する例を挙げてみますので皆さんもこんな風にならないように注意してください。

ヒップが大きい人 >>> ヒップが大きい人が無理してゆとりの少ないパンツを履くとお尻に喰い込み非常に見苦しいです。
また下腹部がきついパンツは履き心地も悪いですのでやはり体型にあったタック量が必要です。

座り仕事が多い人 >>> 座ったときは立っているときよりも構造的にお腹が苦しくなりますから座り仕事の人は気持ちゆとりのある物が良いでしょう。
   画像の美脚パンツはどちらかというと週末(散歩)スタイルと考えた方が良いかも知れません。

O脚の人 >>> 意外と見落とされがちなのがO脚の人の美脚パンツ
細い分だけO脚具合が良く見えてしまいます。(-_-;)
左画像(太いパンツ)は右画像(細いパンツ)よりO脚が目立ちません。
ちなみに私(吉村)はややO脚。。。


レディースを真似たい人 >>> レディースの美脚パンツというのは細い人が着るとホント、脚が長く見えるし格好いいです。
でもこれをメンズで真似ると...大変なことが。。。
どこが違うかというと素材感
最近ではメンズでもストレッチ素材がありますが、レディースほどはのびのびしません。
ストレッチ性のためにはポリウレタン(PU)という素材を混紡しますが、メンズの場合はPUをあまり使わないウールのストレッチ素材のため、レディースほど無理が利かないのです。。。

以上、
これから秋冬物に掛けて流行るであろう『メンズ美脚パンツ』のポイントを一足早くご紹介しました。

■□■ おまけの話 ■□■
今回の原稿を上げるに当たり、レディースの美脚意識とメンズのそれを比較するため大阪店レディース担当藤本さんにに次の画像(同じオン●ー▲のレディースパンツの画像)を見て貰い感想を聞いてみました。

私からみて、画像のレディースパンツは行き過ぎで、これだとボディーに着せると格好良いですが実際に着用するとなるとかなり下着のラインが出たり(言い方は悪いですが)パンツがお尻に喰い込みかえって見苦しいのではないかと思い、女性の意見を聞いて見たかったのです。
...で、藤本さんの意見はこうでした。意外とこれが女性の本音かも知れませんね。(※:私は親しい間柄の女子社員には雅隆さんと言われています。)
04.05.26 件名:レディース美脚パンツについて
雅隆さん
おはようございます。昨日は色々とお手数をお掛けいたしました。

早速ですが、レディースの美脚パンツの件、確かに私もヒップラインは少々やりすぎな感じがします。
元々スラッとしたナイスバディの人が履くとまだ良いですが、標準〜ぽっちゃり目の人が履くととても無惨な姿になると思います。
まぁ、確かにヒップアップの効果はあると思うのですが。。。
レディースの場合美脚パンツというフレーズが今では当たり前となっているので、ピッタリ系から適度なゆとり系など捉え方は人それぞれで、なかなか難しいですね。(大阪店 藤本)