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オーダースーツのヨシムラ
新着レポート

 雨に濡れたスーツ、梅雨時のメンテナンスは?
今の時期は例年の事とは言え、北海道を除けば梅雨のシーズン。
外回りの最中突然の雨に降られ、お気に入りのスーツがびしょ濡れに。。。
パンツの折り目も消え失せ一気に気分もブルーになる。。。
こんな経験どなたでもお持ちでしょうね。

雨でグショグショになったスーツは直ぐにクリーニングへ出す、それも間違いのない方法ですが、手持ちのスーツが沢山あればいいんですが、替えのスーツが無い、お金も勿体ないし、クリーニングを重ねると生地も傷みが...と悩みは尽きません。

そこでこの時期ならではの、こんなちょっとしたアイデアはいかがでしょうか?
少しくらいの小雨に当たった程度ならハンガーにキチンと整えて掛け、2〜3日吊しておくだけでシワは自然と取れます。(ウール素材)
この程度のことなら日々スーツを着ている人にとってみれば当然のことですが、ただその掛け方にちょっとしたコツがあって、こうすればより効果的です。

□ 雨に濡れたスーツを掛ける際の工夫とは? □
上 着 編
1. まず最初にハンガーにバスタオルをかぶせます。
2. 次に その上から上着を掛け、軽く叩き整えます。

これによって表の水分ばかりでなく、内側にこもる汗などの水分までバスタオルが吸い込み除去できる効果があります。

パ ン ツ編
1. ハンガーに掛けますが、その場合このようなスカートを掛けるクリップ付きハンガーが便利です。
 ↓
2. 裾口を上にして掛ける掛け方もありますが、一番は裾口が濡れている場合が多いので、水分を上へ登らせない為、通常の向き(ベルト部分が上にくるように)で掛け、湿気が籠もらないようクローゼットの外に掛けます。
....このように上着もパンツもこのように掛けると水分が早く飛び、カラッと仕上がるという訳ですが、これぐらいの事なら大して手間も掛からず、誰でも簡単にできますね。
実は、いずれも大阪店オーダー担当の幸福氏が日頃から実践しているアイデアなのですが、日頃からこのようにして大切なスーツをメンテナンスしてあげている甲斐あって、彼のスーツは梅雨時でもくたびれた様子もなくいつでもパリッと綺麗な状態をkeepしているという訳なんです。

ただ、もっと完璧に...という方には便利グッズとして画像のようなハンガー用湿気取りも市販されていますので、こちらも併せて利用されると更に効果的ですね。

でも、雨に当たらなくても、日頃気を遣っていても、服の着ジワだけは避けようがありません。
そこで、シワになった場合どのようにするのが一番効果的か?この点についてもご紹介してみたいと思います。

もちろん霧吹きでも簡単なシワは取れますが、それでもしつこいシワはなかなか取れません。
ここはご存知、お助けマン、アイロンの出番です。
そこで、アイロンとそれを助けるお役立ちの道具についてちょっと考えてみました。

□ アイロン掛けを簡単にする便利アイテムって? □
色々なサイトでアイロン掛けはこうして〜と、役立つ情報は氾濫していますが、一般の家庭ではプロと違って器具も揃っていませんので「スーツでも取り分け上着はなかなかうまく掛けられなくて...」と苦労されている方が多いのが実状です。

確かにペタッとした一枚の生地のワイシャツなどと違い、スーツは裏地や芯地、パットや袋地が付随し弾力性がある上に丸みを帯びている為、平面で掛けようとするとどうしてもうまくいきません。

下手に掛けるとかえって変なシワが寄ったり、テカらせてしまったり、挙げ句はボタンなど跡が出してしまったりと、何かと厄介です。

そんな場合プロはどうしているのでしょうか?
プロの場合はアイロンワークのテクニックもさることながら、それなりの道具を使用してシワを取り去っています。

そこで業界のプロが道具をどう使っているのか、ここで覗いてみたいと思います。

アイロン
>>> プロが使うアイロンは、一般の家庭用アイロン(1キロ前後)と違い、重くて(2キロ前後)高熱のパワーに優れ(サーモスタットは無し!)長時間使用にも耐えられます。
価格も4〜5万前後と家庭用の数倍、見た目も武骨ですが、頼りになる存在です。

今回の画像のアイロンは下のバキューム台に接続していますが、それぞれ単品でも市販されています。

バキューム装置
>>> この機械を使うと、アイロン掛けの際プレス台(黒い部分)の下にセットされた装置から、ブオーっと急激に蒸気を吸い込み、生地に水分を残さないよう仕上げる事ができます。
画像に写っていませんがこれ以外に水を送り込む点滴のような器具も付随していて、これは道具と言うよりは、ひとつの機械です。

プレスの後、水分が残っていると、乾くに従ってプレスが甘くなってしまいますので、それを予防するため、プレスの際蒸気を含ませると同時に余分な蒸気を一気に除去するための機械という訳です。
30年くらい前になりますか、これが発明されて我々の仕事も随分とはかどるようになりました。
昔は高熱のアイロンを焦げない程度に生地の上へ載せ、時間を掛けて水分を飛ばしたものなんですけどね、、、
ご家庭でアイロンが上手くいかない理由の一つには水分を残してしまうため綺麗にプレスできないという側面もあります。
だから、ご家庭でバキュームがない時は中温以下で当て布をしてじっくり水分を、完全に飛ばすようにすると綺麗に仕上がりますよ。
(by吉井工場長)
ちなみに画像のバキュームは業務用ですが、この簡易型は一般に販売されています(3〜4万)ので、お求めになれます。
とことんアイロン掛けを極めてみようと思われる方は一度試してみられるのも良いかも知れませんね。

万十(まんじゅう)
>>> 文字通りお饅頭の形をしていますが、主に上着のプレスの際用いられます。
微妙なカーブを使い、胸のドレープなど立体的なシルエットの形成に使われます。
また、細かい箇所のプレスの際にも他の部分に影響を与える事なく威力を発揮します。

袖万(そでまん)
>>> こちらの細長いタイプは分かりやすいですね、袖のプレスの際に使われます。
袖口へ差し込み、袖の微妙なカーブに添い、内側からアイロンを支えます。

鉄万(てつまん)
>>> 呼び名は様々あるようですが、俗にテツマンと呼んでいます。
袖先をズズッと奧へ上げ、アームホール周りにはめ込み、微妙な袖付け周りのプレスに用います。
これを自由に操作出来るようになると一人前といわれるほど、職人技が求められるますので、他の万十とはやや差別化されています。

当て布
>>> プレスの際に忘れてはならないのが、生地に直接アイロンが当たるのを防ぐ当て布です。

色々なサイトには当て布はウール地と書いてありますが、プロはちょっと違います
プロが仕様する当て布はこちら綿スレーキ地です。

これは通常袋地と呼ばれ、スーツを構成する部品の中で、文字通りポケットの袋等に使用している材料です。
丈夫さ故に珍重されているかどうか、理由は定かではありませんが、当て布は昔からこのスレーキと業界では相場は決まっているようです。
一般ではなかなか手に入りませんので、その場合はウール地もしくは古い手ぬぐいやハンカチを折って当て布にするなどで代用できます。

と、このようにアイロン掛けをサポートするための様々なグッズが存在する訳ですが、例えばご家族の方が洋裁をされているという場合は、こういった道具は案外身近に使えるかも知れませんね。
パンツのプレスくらいは素人が掛けてもさほど変わりはありませんが、上着を本格的にプレスするとなると、上記のような器具を使わないとやはり難しいです。

アイロン作業はこの業界では生かすも殺すもアイロン次第と言われるほど、仕上げを左右し、またその作業は奥行きが深いと言われています。
たかがアイロンひとつと思いがちですが、その掛け方ひとつでスーツも生き返りますので、丁寧にゆっくりと愛情込めての作業をお願いします。

急ぐと失敗する事が多いですよ〜!(←自己反省から、トホホ。。。

... 以上、ちょうど梅雨〜夏にかけては湿気や汗も多く、着る側のみならずスーツにとっても過酷な時期ですので、こういった話題を取り上げてみました。

ドライクリーニングは見た目に劣化を促すのでと、大切なスーツはクリーニングに出さずにおくとおっしゃる方も珍しくはありません。
もちろんクリーニングに出さずとも、普段の入念なブラッシングが最も大切なのは言うまでもないことです。

また、連日の着用、酷使は論外です、特にこの時期は湿度が高く、外出後の服は湿気を多く含んでいてシワになりやすいので、常にインターバルを置いての着用をスーツになりかわりお願いします。

ちなみに、ドライクリーニングでの弊害にお悩みの方、スーツを知り尽くしたプロによる生地に優しい水洗いクリーニングと言う方法もあります。
ドライクリーニングでは落ちない水溶性の汚れ(汗・お小水・食べこぼし汚れ)を落としたい場合や、生地の風合いをできるだけ落とさないためには水洗いがもっとも効果的です!

喫煙者の方は...ドライで落ちないタバコのヤニがこんなに溜まってますよ!

  >>参考URL:季節の変わり目は水洗いを