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オーダースーツのヨシムラ
お客様!ありがとう!

 しゅっぱ〜つ、進行!
 季節も変わり初夏の陽気になってきましたが皆さんお元気ですか?
ゴールデンウィークにはどこかへ列車に乗って旅に出られたという方も多いのではないでしょうか?

そんな小旅行に出るには良い季節になりましたが、
旅行と言えば、昔はよく夏が近づくとお盆の帰省列車の予約にJRの窓口で並んだりした経験のあるかたも多いのではないでしょうか?
昔は今ほど車で旅行というのはなかったですよね...
画像のような特急列車や今は殆ど見られなくなった寝台列車での修学旅行など、とても懐かしく思います。

さて
今月はそんな列車好きの方にはたまらないスーツをご紹介したいと思います。
ご紹介するのは、講談社から出版されているコミックモーニングで掲載中の漫画『 カレチ 』に登場するカレチスーツ。
カレチというのは、長距離列車に乗務する客扱専務車掌 旅客列車長 (りょっしゃょう)を指す鉄道業界用語の略なのですが、要は当時の鉄道員さんが着ていた制服を雑誌で再現しよう!そしてそれを読者プレゼントしようという企画なんです。

そして、その企画は既に4/14発売で採り上げられていて・・・
こんな記事になっていました。

当社の名前も掲載されていますがあまりに小さいので見えないかな?

それでは、どんなスーツのご注文だったかと言いますと、、、
ご依頼は旅客列車長(カレチ)さんが夏に着る夏の制服です。

※:詳細は前編の1104お客様いらっしゃ〜い:カレチをご覧下さい。

私はマニアではないので間違っていたらゴメンなさいなのですが、
当時は、、、冷房も不十分で暑かったために少しでも涼しく麻混素材で。
長時間勤務でも楽に着れるようにノーパッド
ディテールも釦などはさすがの日本国有鉄道ということでオリジナル釦
実用面では時刻表等々持ち物が多いため腰ポケットはしっかりした作り。。。etc
色んな要素が詰まった制服の再現でした。

そしてご注文はリアリティーを高めるため当時の制服を見本服として預かり、それをベースにお仕立ていたしました。
ちなみにお預かりした見本服はこんな感じでした...

さて、
そんなマニア垂涎のカレチスーツレプリカですが、つい先日ようやく仕上がりましたので皆さんにご紹介したいと思います。
特にディテールがなかなか凝っていますので是非ご覧下さい。

■ 仕上がり全体像 ■
>>> 全体像はシングル3つ釦。
最近はあまり目にしない上2つの釦を留めるシルエットです。(実際の鉄道員さんは3釦全てを留めている人が多いです。)
 フロントカットがスクエアーになっているのが特徴の1つです。
 その他は襟が小さく、襟幅がちょっと細いのも特徴的ですね。


□ こだわりのディテールその1:オリジナル釦 □
>>> マニア垂涎のアイテムの1つがこのオリジナル釦
この釦だけは講談社さんの方でネットオークションで入手した物を使わせて貰いましたが、当時の現物その物です。

マットなシルバー釦で、車輪のような旭日のような柄が入っています。
これは制帽の記章と同じですからきっと旧国鉄のマークなんでしょうね。

でも、この車輪の柄ですと上下がありますよね。。。(下が地面を表しているのでしょうか?)
普通のボタン付けですと気を遣えば上下を揃えられますがそこまで出来ない人もいます。
だから・・・釦には軸を付けて、釦を付ける側には軸が通るように小さな穴を開け、その裏には2重環というリングで留めるんです。

これなら上下が固定されますから車輪が逆にならないですし、洗濯の時も簡単に外せます。
う〜ん、、、大変合理的に考えられています。。。
表がこうで...
裏がこう

□ こだわりのディテールその2:軽量化しつつ実用に耐える裏作り □
>>> 意外と見落とされがちなのはジャケットの裏仕立て
画像をご覧下さい。
パッと見て分かるのは裏地を殆ど使っていないと言うこと。
今で言う半裏仕立てのような感じです。

しかも、この素材がオモシロイ。
これ、今風の滑りの良い裏地ではなく、滑りの悪い綿で出来た裏地です。
滑りが悪いのと、軽量化のためか非常に裏地を張る範囲が狭いのが特徴です。

一方で腰ポケットの裏側に位置しているところは、きっと腰ポケットには時刻表など重い物を入れるのでしょう。
耐久性を高めるために紐でポケットを吊している作りです。
最近の仕立てではここまでするのはむしろ少ないですね、、、
実用指向の制服ならではのなせる技です。
オリジナル
今回お仕立てしたもの

□ こだわりのディテールその3:胸ポケットはハンドメイド風 □
>>> きっとマニアの方でも分からないところでしょうけれど、オリジナルの制服はなかなか凝っていて、大量生産の制服でありながらハンドメイド的要素が残っていました。
それが分かるところが、実は胸ポケット

皆さんのスーツの胸ポケットの左右の上端を見てみてください。
きっと角張っていると思います。

ココの部分は生地に角度を付けて切って貼る訳ではありませんで、角張らせた部分を中に折り込む必要があるのですが、今では左右で折り畳んで縫いますから角張っているものが殆どですが、昔は(今ではハンドメイドでは)ここを少しずつ中に畳み込んで丸く処理するのが一般的でした。

その名残はしっかり踏襲したいと思い、今回はこんな所まで気を遣って仕立てました。

□ こだわりのディテールその4:車掌さんの腕章付け □
>>> よく車掌さんって左腕に腕章を付けていますが、当時のこれは安全ピンで留めていた訳ではなかったようです。
実はこれは腕章をスナップで留めていたんですよ...

・・・ということで忠実に再現したいと思った私は仕上がった後で、ちょっとした一手間を掛けよう!と思い、スナップを取り付けました。

これなら腕章を付けてもズリ落ちる心配はありません。

□ こだわりのディテールその5:制帽カバー □
>>> ここまでこだわるのが当社らしいところ?かな?

車掌さんの制服では当然帽子がありますよね。。。
冬服なら濃紺の帽子ですが、夏には白い帽子があるのではなくて、濃紺の帽子の上に白い生地で夏用のカバーを取り付けます。
そうすると、制服の上下とも色合い的にマッチしますし、夏らしく涼しげになりますよね。

私共はスーツの仕立屋ですから帽子カバーなんかは作ったことが無かったのですが、今回は当時の帽子カバーをお借りできましたので同じサイズで再現しました。
ちゃんと帽子の記章にカバーが掛からないように出来ているでしょ。
(この部分は三久服装の吉井工場長のお力をお借りしました。)

ここまでやるテーラーってないんじゃないですか?

□ ボトムも注目 □
>>> 注目点はまだまだあって、実はボトムも大注目です。
昔はこんなんだったけ...と思うのですが、当時の制服は股上が大変深い物でした。
見本服はSサイズの物でしたが、小柄な人のパンツで股上が30cm近くありましたから。。。

今の若い子だったらノータックの股上なら23〜24cmで深い方ですからね。。。

見本服は股上が深すぎて昔体育の授業で着た柔道着のような感覚です。
今回はレプリカと言うこともありますが、実際のお仕立てではこの辺は少しだけディフォルメして27cmぐらいにしましたが、それでも私が持ってみると、、、やっぱり気持ち長い(深い)ですね...

さて、
そんなカレチスーツSサイズとMサイズで合計6着ご注文頂き、1着は作者の方に贈呈するとのことですが、さてさてどんな方がご当選されたのでしょうね。。。

ご当選された方はきっとこれを着て、一言こう言うんでしょうね。。。
しゅっぱ〜つ、進行〜


それでは次回ももお楽しみに〜