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オーダースーツのヨシムラ
お客様!ありがとう!

 ツイードランの誘惑

皆さん、明けましておめでとうございます!!!
今年もよろしくお願いします。

お正月はいかがお過ごしでしたか?
私はと言うと、お屠蘇いただきながら事始として、この原稿書いていました。

今年は午年!ナント私の?回目の干支なんです。
だから、天馬のごとく駆け上がろうとお正月から飛ばしています。
まぁ、実態は大分あちこちにガタが来てますけど今年も頑張りますよ!

年明け最初のお話は、Kさんのジャケットが出来上がった、です。
これを着て、冬の寒さもぶっ飛ばし、颯爽と自転車を駆る自分の姿をイメージして出来上がりを心待ちにしていたKさんのツイードジャケットの話です。
エコなKさん、車より好んで自転車に乗り、大阪や神戸の街を疾走するそうですよ。

このジャケットは、日本でも定着しつつある “The TWEED RUN ” のドレスコードにもなったハリスツイードを使用して作ったモノです。
仕上がったジャケットの内側には、「HARRIS TWEED」とその証の生地ネームがしっかり縫い付けられていました。

また、「HARRIS TWEED」の生地ネームには、生産数を表すシリアル?(通し番号)が記載されていますが、他の生地ブランドには無いもので、ちょっと珍しく英国らしい歴史の重みを感じますね。

それでは、改めて仕様をご案内しますね。

□ツイードジャケット仕様□
 生地 HT432 ハリスツイード 白黒ヘリンボーン
【ジャケット】
 前ボタン シングル3つボタン中1つ掛けベルト付き カスタム仕様
 身頃前後
帯付き カスタム仕様
 衿型
ノッチラペル
 ベント センターベント
 胸ポケット  無し
 腰ポケット パッチ&フラップ付き プリーツ無し
 袖仕様 本切羽 3つボタン
 前カット  カッタウェイ
 裏仕様  総裏
 裏地  Z509-2 ネイビー×レッドストライプ
 ボタン  黒レザーバスケットボタン
早速、仕上がり連絡をKさんにしたところ、時を置かずに大阪から新幹線を乗り継いでやって来てくれました。

連絡した際、仮縫いから3週間、待ちに待った様子が凄く感じられましたが、実際に自分がオーダーしたジャケットの出来上がりを目の前にした時のKさん、本当に嬉しそうでした。

そして、早速、袖を通してくれました。



このジャケットのデザインの特徴は、なんと言っても腰まわりのベルトで、バックルではなくポロコートのバックベルトのように、着る人のウエストサイズに合わせた長さで作り、固定した二つの釦で留める仕様にしてあります。

また、このベルトを止めるため、ループの替わりになるベルト通しを、肩から胸、ウエストへと切り替えの帯にして、前身と後ろ身に付けています。
他のデザインは一切付けずシンプルに一つの機能を追及して完成したものですが、とてもシンプルで美しい仕上がりになりました。
Kさんもそこに、このジャケットの魅力を感じたようでした。

念願のサイズもフルオーダーにした甲斐あって、ぴったりでした。
イージーオーダーと比べてフルオーダーは、時間と手間暇、それにお金と全てに余計かかるため、お客さんに負担になっていると思いますが、体型に合う、個性的なデザインに対応できる、といった利点も多いのです。その点で満足して喜んでもらえると本当に嬉しいです。

また、今回のオーダーではお客さんの希望する見本服が有って、仕立てに当たって凄く助かりました。

Kさんが着用しているのが、今回のオーダーで仕立てたもの、私が着ているのがKさんが持ち込んだ30年ぐらい前のジャケットです。
どうです?ちょっと見にくいかも知れませんが、30年前のジャケット、本当に時の流れを感じさせないデザインと素材です。

改めてハリスツイードの耐久性の高さに感動しました。
Kさんの話を聞いているうちに、もうひとつビックリすることがありました。

それは...
なんと、このジャケットは私が前職で在籍していたO社で作られたものだったのです。 30年ぐらい前と言うと、トラッドが結構流行していた頃で、私も社内でトラッドのオリジナルブランドの立ち上げから営業まで参画して、このサンプルと同じようなハリスツイードのヘリンボーン・ジャケットを好んで着ていました。

Kさんが持ち込んだジャケットは、関西に本店がある近鉄百貨店のプライベートブランド「B」のサンプルとして、私が参画したトラッドブランドを参考にして作られたものでした。 当時としては、なかなか斬新なデザインだった為、結局は製品化されず、このサンプル 1点だけの生産に終わってしまったのが真相でした。
ん〜、残念!
それがめぐってきて、目の前にやって来るとは、不思議な縁を感じます。

大袈裟かもしれませんが、一人のお客さんの人生30年に関わって、色褪せずに存在している事実って、とても感慨深く素敵なことだと思います。
このジャケットも、今回Kさんが新たに仕立てたことで一区切りがつき、タンスに眠ることになるのですが、大役を果たせて本当に満足そう(?)でした。

Kさんの帰り際、新旧のハリスツイード・ジャケットと一緒に、みんなで記念撮影をしました。



ホンワカとハッピーな気持ちにさせられたのは、何故でしょうか?

撮影が終わり、包装に取り掛かろうとした時も、Kさんは新しく仕立てたジャケットを着たまま脱ごうとしません。
結局、自宅から着てきたジャケットをスーツケースに入れ、預かっていたサンプル服は大事に包装して送ることになりました。

仕立てたジャケットに満足したKさん、心配して一緒に来ていた親友の珠玖さんと連れ立って、祝杯を挙げにまたまた神田の夜の街へ消えて行きました。