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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!

 モードなジャケットのご注文です。
2月も中盤を折り返しましたがまだまだ寒い日が続きますね。
私は一度治った風邪がまたぶり返し、情けないことにティッシュペーパーとマスクが手放せない日々が続いております。
皆様におきましては風邪などお召しになられていませんか?
寒さだけではなく花粉も飛び始め、ダブルで苦しい時期ですので皆様もお身体は重々ご自愛下さい。

さて、今回はモード的なジャケットのご注文を頂きましたのでご紹介したいと思います。
お客様はIさんと仰る学生のお客様なのですが今時のモードに大変うるさいお客様です。
ご注文はこの様なメールを頂いたことから始まりました。
08.01.22 件名:オーダー注文の相談
Iと申します。
以前にそちらでカジュアル用ジャケットを仕立ててもらったのですが、体型が多少変わり、またジャケットが欲しくなり、新たに作りたいと考えています。
そこで質問なのですが、手持ちのサファリジャケットを型抜きしていただき、それのサイズを基本にしてテーラードジャケットの形にアレンジしたりはできないでしょうか?
添付した写真のモデルが着ているものと同型なんですが、腕や肩のシルエットが凄く気に入っているので、それをオーダージャケットでも再現できないかなぁと。因みに実物の袖は写真と違って長袖です。
多分、服を作る人に言わせればちょっと細すぎるんじゃないかということになると思います。
このジャケットの前を閉めると拳一つ分の余裕すらありません。
ですが自分はタイトな服が好きなので、できれば自分の体型よりもこの服に沿った形のものが欲しいです。
以前作ったジャケットも肩と腕に余裕があるのが気になったので。
サファリジャケットとは別に添付したスーツスタイルの写真は来期のコレクションのもので、デザインはこんな感じの二つボタンのノッチドラペルにしたいと考えています。
生地はウール生地よりも、あるならハリのあるコットンやシアサッカー生地を希望します。
ジャケットのみのクラシコ2で、予算的には10万以下で収まればいいくらいに考えています。

メールと一緒に頂いた画像がこちらです。
さてさて、これは困りました。
画像を拝見するととにかく細い!!
ブランドの方でもこれが出来上がるまでに何度も型紙を作り直しているのは容易に想像できます。
型抜きすればなんでも出来るというのは正直、そんな簡単な話では無く工場に可能かどうか聞いてみなければなりません。
工場にも得手不得手があり、その分野から外れたり、初めてのことでは簡単にはOKが出せないのが現状です。
その様な不安を抱きつつ、メールを担当した東京店SHOPMASTERからこの様なお返事を致しました。
08.01.22 件名:非常に難しいご相談です。
Iさん
こんにちは、オーダースーツのヨシムラ(吉村)です。
寒波の影響で連日寒い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか?

昨夜は久しぶりのご連絡を有難うございました。
Iさんは以前タキシードジャケットの上だけご注文いただいた方ですね。
その節はメール等々有難うございました。

さて
ご相談いただいた件ですが、話を要約しますとこんな感じのようですね。
 1. 既存のジャケットから型抜きをする
 2.抜いた型紙から希望のデザインへ変更する
 3. 春夏物のコットン素材で仕立てる
画像も頂きましたのでお考えの趣旨は良く分かったのですがいくつか難しい問題があり、以下ご案内いたします。

問題点1:型抜きの問題 
>>> ここ3年で当社もフルオーダー工場を傘下に収めた関係から型紙を1着毎に個別に出来ることも技術的には可能になりましたが、如何せん、手間がどうしても掛かるため割高になります。
(イージーオーダーで+15,000〜20,000円ほど)

問題点2:抜いた型紙をアレンジすること 
>>> 型紙ができた後は、簡単なアレンジ(例えば、2つボタンを3つボタンへ等)でしたら容易に出来ますが、頂いた画像を拝見する限りではかなりアレンジが難しいと思います。
具体的には、見本服は見た感じノーパッドですが、これに肩パッドが入ればアームホール全体もその分大きくしなくてはいけませんし、これは袖の太さに直結してきます
また、肩のラインを希望デザインに近づけるとすると、あまりに肩のラインが違いすぎます(肩のラインは見本服の方がご希望に近いのでしょうか?)
などです。

このためお受けするとすると私共としてもクラシコ2ではなく仮縫いを入れたフルオーダー対応でないと厳しいと思います。

問題点3:素材の問題 
>>> 夏らしいシアサッカーやコットン素材は丁度今年の春夏で展開しようと思っていましたので、生地その物の手当は大丈夫かと思いますが入荷が2月初旬になってしまいます。
また、コットンという素材特性上縫い直しをすると針跡が目立ってしまうため縫製上も非常に取り扱いが難しく、この点からもイージーオーダーではちょっと無理かと思います。

以上の点が難しいところなのですが、ご予算的に10万円以下ということであれば、コットンorサッカー素材を使って通常ジャケット48,000円位で考えていますから仮縫いを入れたフルオーダーで+35,000円(ジャケット単品時)プラス型紙アレンジ代のオプション(+10,000円ほど)を頂いたとしてもご予算的には大丈夫かと思います。
いかがでしょうか?
よろしければご検討いただければ幸いです。

オーダースーツのヨシムラ
東京SHOPMASTER 吉 村 雅 隆
ショップマスターからこの様なメールをしたところ早速、Iさんからお返事を頂きました。
08.01.22 件名:迅速・丁寧な返信、ありがとうございます。
迅速・丁寧な返信、ありがとうございます。

> 問題点1:型抜きの問題
> ここ3年で当社もフルオーダー工場を傘下に収めた関係から型紙を1着毎に個別に出来ることも技術的には可能になりましたが、如何せん、手間がどうしても掛かるため割高になります。


>>> これはフルオーダーにすれば、コストはかかるものの可能ということでしょうか。
であれば全然問題ありません。

> 問題点2:抜いた型紙をアレンジすること
> 型紙ができた後は、簡単なアレンジ(例えば、2つボタンを3つボタンへ等)でしたら容易に出来ますが、頂いた画像を拝見する限りではかなりアレンジが難しいと思います。


>>> 確かにそうなんですが、そこをなんとか。
形はブルゾンっぽいままでいいので、前身ごろや袖先にのみいわゆるテーラードジャケットのディテールを再現できればと思っています。
肩のエポレットは上手いこと残せれば残したいくらいです。
ここらへんは実物持っていって相談した方が早そうです。

> 具体的には、見本服は見た感じノーパッドですが、これに肩パッドが入ればアームホール全体もその分大きくしなくてはいけませんし、これは袖の太さに直結してきます。

>>> 仰るとおりノーパッドです。
なのでノーパッドで仕立てていただきたいと思います。シルエット重視で。

> また、肩のラインを希望デザインに近づけるとすると、肩のラインがあまりに違いすぎます
> (肩のラインは見本服の方がご希望に近いのでしょうか?)


>>> デザイン例として添付したものは2Bノッチドのイメージとして付けたものですので、形はこのイメージに近づける必要は無いと思っています。

> 問題点3:素材の問題
> 夏らしいシアサッカーやコットン素材は丁度今年の春夏で展開しようと思っていましたので、生地その物の手当は大丈夫かと思いますが入荷が2月初旬になってしまいます。


>>> 今すぐ必要なものではないので、二月以降になっても全く構いません。
1月28〜31日の間に店舗を伺おうかと思っています。
そのときに型抜き用のジャケットも持って行きます。デザイン等の相談もありますし、1月28〜31日の間で吉村さんに余裕のあるだろう日にち・時間帯がもしあれば教えてください。。
ここまで仰っていただけるのであればお断りする理由はありません。

当社もオーダー屋の端くれ、気合いが入ってきました。

そんなことからご都合をお伺いするメールを送り、Iさんには早速お時間を作って貰いご来店いただきました。
当日はSHOPMASTERが大阪出張でお相手できないため、引き継ぎました私、山橋とフルオーダーのフィッター中島氏の2名でお相手致しました。
この様な難しいご注文の引継ぎは正直、気が重い...

当日は画像で拝見していたジャケットの現物を持ってきていただきましたので早速、型紙を引く中島氏に確認して貰いましたが、
これなら大丈夫!出来ますよ!!
と力強い答えが返ってきましたので後は細々とした仕様を決めるだけです。

ちなみにお持ち込みいただいたジャケットはこちらです。
ジャケットはDior(ディオール)のもので、いやはや最近の学生さんはお金を持っていますね〜。
僕はいつも財布の中味は数百円の貧乏学生だったな〜
中島氏からOKが出ましたのでIさんもホッとされた様子でしたが我々はグッと気を引き締めて掛からなければ...

デザインは後ほどとして先ずは生地選びです。
Iさんはシアサッカーなどのコットン素材でお考えだったのですが生憎お気に召していただける色柄が無く、今回は昨年から展開しております(伊)オルメザーノの黒のリネンでお仕立てすることになりました。

夏と言えばリネンですがオルメザーノはリネンでは定評があり素敵な風合いです。
ですが仕立てる私たちからすればリネンはコットン同様の堅い素材のため、仮縫いでは針跡が残りやすく非常にデリケートな素材です。
この辺りはIさんがお帰りになられた後、中島氏と三久服装吉井工場長との間で長いミーティングとなっていました...ご苦労様です...(^^;)

デザインは色々とお話した結果、ショート丈のシングル2つボタンに決まりました。
エポレット(肩章)やアクションプリーツなどは外しシンプルなデザインです。
加えてカッタウェイフロントで軽快感の有るデザインです。

Iさんは当初、クラシコ2でご検討されていたのでお台場仕立て等も考えていたのですがあまりにシルエットがタイト(細くゆとりがない)なため、お台場を付けるとシルエットが崩れることから、今回はシルエット重視でお台場は勿論、内ポケットも無しでお仕立てすることになりました。

また、シルエット重視ですからラペルも芯無しでお仕立てすることとなりました。
どちらかというとフルオーダーを担当する三久服装ではカッチリとした英国風のスーツが得意で今回のご注文はどちらかというと苦手な分野に入ります。
その様なことから若干不安ではありますが...中島さん!吉井工場長!ここは一つよろしくお願いします!!

加えてIさんは遊び心は忘れていない様でお持ち込みのカットソーを裏地に使えないかとのお願いが有りました。

柄が個性的なカットソーですがジャージー素材故に解いたときの縫い目の問題や表地との相性で強度の問題から中島氏からNGが出ましたので今回はフラップ裏にお付けすることで何とかご理解いただきました。

さてさて、Diorを模したジャケットはどの様に仕上がってくるのでしょうか?
中島氏と吉井工場長に任せておけば間違いないだろうとは思うのですが心配性の私はこれから不安な日々となりそうです。

仮縫いの模様と仕上がりは次回でご案内いたします。
それでは次回をお楽しみに〜!!
(執筆:山橋)