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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!

 クラシックなイタリアンスーツ
11月に入りも深まりつつありますがこの時期は空気が澄んでとても気持ちよい季節ですね。
街の木々も段々と紅葉し始めるこの時期はお洒落をして出かけたくなるそんな時期でもありますね。

段々と歳を重ねるとこの時期はグレーフランネルの様な物に触手が動きますが今回はその様な雰囲気有るスーツのご注文を頂きましたのでご紹介したいと思います。
ご注文いただいたのは20代中頃のまだまだ若いFさんです。
上記のような事を言っていると怒られてしまいそうですがお若い方には珍しく本物志向のお客様です。

Fさんはこれまでに何着かご注文を頂いておりますがご注文内容は一貫しておりいつも細身のイタリアンスーツです。
今回もオーダーシートを頂戴しスタートしたのですが連絡事項覧にFさんらしいこだわりのポイントが記されていました。
お世話になります。Fです。
今回仕立てていただきたいスーツのコンセプト、大雑把なディテール以下に記載しておきます。
前回と同様に山橋さんにご担当いただき、デザイン等についてご提案いただいた上で、アイディアを膨らませながら仕様の決定をしていければありがたいです。

【コンセプト】
肩の凝らないスリーピース ナポリ風

【デザイン、ディテール等】
1.ジャケットのディテール
・肩周りの前身頃を小さく、後身頃を大きくとって背中から抱き込むような作りにしたい
肩パット排除
肩幅限界まで詰める
雨降りにして、肩周りの可動性を確保
・ウエストの絞り位置は高めに

2.パンツのディテール
・サスペンダーボタン付き(ベルトループなし)

3.その他
・ジャケットの芯地はキャメル毛芯を使用したい
 (※上記、難しいかもしれませんが、是非相談に乗っていただきたく...)
うひょ〜!!今回も難しそうなご注文ですね〜!!
しかし私も自分のスーツにはこの様なこだわりがありFさんの気持ちはよく分かります。
またご指名でここまで期待されているのであればお断りするわけにはいきません。
今回もフルオーダーでのご注文ですから三久服装の吉井工場長やフィッター中島さんの力を借りれば何とかなるだろうとのことでお受けすることに相成りました。

画像は以前にお客様からお借りした某イタリア有名サルトの雨降らし仕様です。
しかし気になる一文が...
それは
「キャメル毛芯を使用したい」

昔はよく聞いた芯地ですが最近は聞かないな〜とのことで早速、吉井工場長に確認の電話を入れました。

吉井工場長曰く...
「昔はよく使ったけれど最近はとんと見ないですね〜。付属屋さんに確認してみるけれどおそらく手に入らないでしょうね〜、、、」
とのことでした。

そこでFさんがご来店時にキャメル毛芯をご用意出来ない旨、お伝えしたのですが、なんでもFさんはネットでキャメル毛芯が非常に柔らかくしなやかな素材と言うことを調べられそのキャメル毛芯の柔らかさをどうしてもご自身のスーツにもと考えられたらしいのです。
毛芯以外のディテールを決めFさんがお帰りになられた後で工場長と私でしばし電話ミーティングです。
私の認識では本来キャメル毛芯は本バス毛芯なみにしっかりとした物でイタリアのスーツというよりは英国のカッチリしたスーツを想像してしまいます。
吉井工場長もその様な認識でいたらしくどうしたものかと思考を巡らせました。

イタリア高級サルト(K●T●N)では使用していると噂には聞いていましたがそれは別注をかけていると思われ当社の様な零細企業ではなかなかそこまでは出来ません。
また三久服装はもともと英国系のカッチリしたスーツが得意な工場ですしまた手に入らないキャメル毛芯ということで工場長も頭を悩ませてしまったわけです。
とは言ったものの流石は工場長、色々と思案していただいた結果...

「無い物は仕方ないので他で代用するしかない。夏場に使う薄い毛芯のバスの量を抜いて調整すればご期待に添う柔らかさになるんじゃないかな〜。山橋さん、何とかなりますよ!
...と力強い一言を頂きました。

不安が残りますが百戦錬磨の工場長がそう言っているんだし大丈夫だろうとのことで早速、Fさんにメールを入れました。

画像は通常使用する毛芯で、分かりづらいですが下からハード、ミディアム、ソフトとなります。
今回は一番上のソフトからバス毛芯の量を調整し使用します。
F様
お世話になります。オーダースーツのヨシムラ(山橋)です。
今日はすっきりしない天候となりましたがいかがお過ごしでしょうか?

日曜日はお忙しい中、ご来店並びにご注文を頂き有難うございました。
フルオーダーを担当する三久服装の方にキャメル芯地につきまして問い合わせたところ昔は手に入っていたらしいのですが最近は入手出来ない状況とのことでした。
ただ、その当時のキャメル芯は非常に硬い物でバス芯以上だったとのことです。
お役に立てず申し訳ありません。

付属品では取り扱いの多いお店などに聞いてみたのですが現在日本では入手が非常に難しい状況のようです。
私もネットで調べてみましたが紹介例が非常に少なくK●T●Nで使用されると言うことぐらいでした。

工場長に解決策はないかと聞いたところ前回F様のジャケットをお仕立てした際に使用した夏場の薄い芯地からバス芯の量を調整すれば何とかなるのではとの答えが返ってきました。
この様なことぐらいしか現段階でお答えできないのですがご容赦下さい。
仮縫いの際にはもう少しはっきりしたお答えが出せると思います。

以上、簡単ではございますがご報告方々ご連絡まで。

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オーダースーツのヨシムラ
吉村株式会社
MAIL.ORDER.SHOES担当__山橋_毅
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と上記の様なご連絡をお入れした所、早速この様なメールを頂きました。
山橋さん

お世話になります。Fです。
早速のご連絡、ありがとうございます。

キャメル芯の件、了解しました
無いものを、いくら欲しいと言っても仕様が無いので、代替案で解決する方向で、次回仮縫いの日に話し合わせてください。

実は今回、私がキャメル芯と申し上げたのは、以下の理由があります。
  ・表地のしなやかさを殺さないような、芯地を使って欲しい
  ・ある程度のボリューム感(ふんわりした印象)も出したい
ですので、上記を実現できるのであれば素材は問いません。

色々と、ご面倒をおかけしていますが、よろしくお願いいたします。
Fさん、ご理解いただき有難うございます。

さぁ、これで詳細が決まりましたので後はフィッターの中島さんに前回の作成した型紙を今回のご注文内容に合わせて修正してもらい、仮縫い状態まで仕上げるのみです。
中島さん、吉井工場長、宜しくお願いいたします。

それではデザイン、仕様を含めて今回のご注文内容をご紹介いたします。
◆ ジャケット ◆
 生地
G1078(葛利毛織、グレーストライプ)
 基本デザイン
シングル3つ釦中掛け
 ベント 
サイドベンツ
 ゴージライン ハイゴージA、標準より1センチ高くする
 袖口
本切羽、釦4つくっつき
 胸ポケット バルカポケット
 腰ポケット ハッキング プラスマイナス1センチ
 フロントカット カッタウェイフロント
 裏仕様 総裏丸台場
 AMFステッチ ピックステッチ、コバに入れる
 裏地 Z527−1
 釦 本水牛艶消し茶色仕様
 特記事項 肩パッド無したれ綿無し袖付けは雨降らし(ギャザー)、チケットポケット(モミ玉縁、松葉閂)
◆ ベスト ◆
 デザイン シングル6つ釦、5つ掛け
 胸ポケット ハコ
 尾錠付き
 特記事項 背キュプラ表のみZ530−F19(ガンメタ)、裏はZ527−1
◆ パンツ ◆
 前タック 消しダーツ1本
 脇ポケット ナナメ
 ピスポケット 両玉縁、左釦付き
 裾口 シングル、モーニングカット
 特記事項 持ち出し付き、ベルトループ無し、サスペンダー釦付き
以上に決定致しました。

今回、お選びいただいた生地は当社でもフェアーを開催し大々的にプッシュしております葛利毛織のG1078に決定しました。
最近では冬場でも薄手の物に人気が集中しておりますが今回の生地は少し起毛したサキソニーです。
最近の薄手の物より秋冬の雰囲気が高くお洒落をするにはもってこいの生地です。

今回のご注文はトレンドを加味しつつもクラシカルなイタリアンスーツのイメージで出来上がりが楽しみですね。
さてさて、どのように仕上がってくるのでしょうか?
期待半分、不安半分といったところです。
仮縫いの模様と出来上がりは次回でご紹介いたします。

それでは今回はこの辺りで失礼いたします。次回をお楽しみに〜!!

☆ おまけの話・・・ ☆
今回は雨降らしというギャザー仕様の軽いお仕立てのスーツでしたが今回の葛利毛織の生地の雰囲気も柔らかい物でこういったスーツには今度、当社で取り扱うこととなったPatine Shoesのようなシューズが相性抜群です。

ビジネスでは難しいかもしれませんがお休みの日などは明るい色目(ライトブラウンetc...)を合わせてもよろしいのではないでしょうか?
ご興味のある方は店頭にてご覧頂けますのでお気軽にご来店下さい。
(執筆:山橋)