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オーダースーツのヨシムラ
新着レポート

 三久新企画 「一枚仕立てジャケット」
日差しに暖かさが感じられる季節になりましたが、こうなると気持ちも身体も軽くなっていきますね。
洋服も冬の重いコートやジャケットを脱ぎ捨てて、軽くソフトな、でもラフになりすぎない羽織りモ ノが欲しくなる季節になりました。

そんな衣替えの時期になると、今年の春夏はどんなお洒落を楽しもうか。。。とお思いになる方も多いと思いますが、私(玉岡)は今シーズンこんな企画をMDしてみましたので是非皆さんにご紹介したいと思います。

題して・・・  >>> 一枚仕立てハンドメイドジャケット

コンセプトは >>>
  軽くて、柔らかな作り
    くだけすぎずラフにならない服の顔
      長く着る事が出来るハンドメイド仕立て
        マルチにコーディネート出来るデザインと素材

...こんな欲張りな要求を満たしたジャケットは出来ないものか?
お召しになる年齢層も当社の中心顧客である20代後半〜40代前半までのトレンドに敏感で、モードから、どカジュアルまで着こなした30代後半の団塊ジュニア世代や、同じくDCブランドを着倒した40代前半の後期バブル世代の方。
彼らの感性に響く、そんなアイテムを探し求めていました。

しかし、こんな良い所取りのジャケットなど、前職で企画すれば百貨店店頭ではどうみても10万円以下ではできない、それをヨシムラのハンドメイド工場で皆さんが気軽にお求め頂ける価格帯で何とかならないか...

今回は考えからMDしたのが今回のジャケット。
まずは仕上がりからご覧下さい。




■ 見た目のポイント ■
ファッションはやはり出来上がりの姿が何より雄弁です。
このジャケットは次の点が見た目のポイントとなっています。

1. 肩周りや胸の辺りの美しいドレープ

通常、肩パッドをはじめ、胸の増芯、ボリューム感を出すためのフェルト等々の副資材を入れることで肩や胸回りのボリュームを出しますが、それらを一切使わずに表現したこのドレープ感。
胸の立体感、肩周り・袖周りのスッキリ感、どれをとっても秀逸です。

2. ラペルからフロントカット、前裾にかけての美しいカーブ

ジャケットの顔となるのはやはりフロントの襟から裾にかけてのカーブや立体感です。
特に、第1ボタン近辺の襟のロール感および裾に掛けての立体感は高級感も出ますし、色気も出ます。
しかし、これらは芯がないことで通常はペロンとなってしまいがちで芯ナシの仕立てではここが見た目の大きなポイントになります。

3. 肩胛骨からヒップにかけて立体的かつ流れるようなライン

三久が最近どこよりも意識ししているのが背中のシルエット。
アイロンワークから生まれる吸い付くような背中のシルエットはもちろん健在です。

4. お尻を包み込むようなソフトなシルエット

少しユニークなのはチューリップのように腰を包むような形をした裾のシルエット。
クラシコイタリア的な男の色気はこういった所から表現されています。

5. ハンドメイドならではのスウィートカーブゴージ

ミラノゴージという言葉をご存じでしょうか?
これは襟のゴージがカーブしているデザインを言いますが、物作りをする上で曲線を作ることは非常に難しい物です。
それを、クラシコイタリア的な雰囲気を大切にしたいと言うことで敢えて取り入れました。
その美しさはハンドメイドでしかできない何とも言えない雰囲気を醸しだしています。

■ 服作りのポイント ■
ファッションは見た目が最重要ですが、それを支えるのは服作りです。
まして当社は物作りのこだわるお店(工場)ですからこれを消費者の皆さんに知って頂くことこそ、当社らしさが分かるというものです。
そこで、今回の服作りのポイントを改めてご紹介しますと...
ポイントは 4つ
1.芯地無しでも立体感を表現出来る型紙の作成
2.副資材(芯・パッド)なしでも仕立て映えする素材選び
3.腕の見せ所 アイロンワークを駆使した胸・腰の立体感作り
4.1.〜3.を複合させたハンドメイドの物作り
それぞれが実際にどういうことか折角の機会ですから技術的背景を踏まえご紹介しましょう。
 服作りポイント1
 立体感ある型紙作成 

デザインのベースはイタリアのセンツァ・インテルノ(芯を抜いた一枚仕立てアンコン服)
これを参考に、型紙上や縫製上の課題(立体感と軽さ、柔らかさ)を解消していきました。
具体的な型紙はこのような感じです。
型紙の作成はクラシコイタリア的なモードの雰囲気は若手が作成した方が良いだろうということで梅本君が作成しました。

画像の中で黒線青点で補色)がベースとなったパターン、これを赤線赤点で補色)のような型紙に修正し、簡単に言うと腰を包み込むようなシルエットに修正を加えました。
そして、物作りは型紙から一気に製品になる訳ではありません。
トワルという見本服作りをして、雰囲気を確認の上、最終的な見本服作りを始めます。
画像は、型紙検証をするための試作品トワルサンプル。工場長と協議中です。
こうして、立体的なシルエットが綺麗に出ているか確認します。

 服作りポイント2
 副資材(芯・パッド)なしでも仕立て映えする素材選び 

芯ナシの一枚仕立ては良い点を言えば軽さ、柔らかさ、カジュアルさが挙げられますが、これを逆から言いますと安っぽく見えてしまう難点があります。
画像が悪い例の典型です。
これは作りの悪さと素材選びが悪いためこのようになってしまうのです。

もちろんこういった事は安価な製品で起きがちな事ですが、当社ではこうならないような素材選びを強く意識して素材選びから吟味しました。
結果、選んだのが 葛利毛織製4プライの素材
4プライとは、4本の細い糸を撚って1本の糸にした生地を指しますが、通常は1プライ(単糸)か2プライ(双糸)が主流の現在、原毛をタップリ使う4プライは大変贅沢ですが、こうすることで生地自体にザックリ感、通気性の良さ、適度な堅さ・張りを持たせるようにしました。

なお、余談ですが、通常4プライにすると生地は想像以上に堅く、ガチガチになりますがそうならなかったのは1本1本の原毛ベースを極めて細い原糸にして織ったからに他ならず、こういった小技を利かせてくれるのは国内では葛利毛織を置いて他にないでしょう

 服作りポイント3
 アイロンワークを駆使した胸・腰の立体感作り 

ここもハンドメイド仕立てならではの優位性だと思いますが、服作りにおいて立体感作りというのは型紙だけでは作り上げることは出来ません。
立体感作りには型紙、そして十分時間を掛けたアイロンワーク(クセ取り)、これが肝要です。

こちらについては、以前三久服装のページで動画でご紹介しましたのでそちらをご覧下さい。
 >>三久服装:生地を立体的にすると言うこと

 服作りポイント4
 1.〜3.を複合させたハンドメイドの物作り 

かくして本縫いで出来上がったジャケットは、先述のような柔らかな曲線に包まれた立体的かつソフト感のある仕上がりとなりました。
これこそハンドメイド工場で型紙から縫製まで丁寧に作業されたからこその所作なのです。

いかがでしょうか、こうして仕上がった一枚仕立てジャケット。
とかくカジュアルジャケットは安っぽく見えてしまう中、一線を画した上質さ溢れるジャケットになっているのではないでしょうか?

■ 肝心のお値段 ■
どんなに素晴らしい物でも高額すぎては、手が出せないもの。
そこで今回はハンドメイドでありながら敢えて仮縫いをオプション化することでコストダウンいたしました。

この元となった考えが、イタリア的な発想で
優れた型紙で作られたスーツはそれだけで(誂えなくても)美しい物だ。』という考え
ハンドメイドの工場は一般に仮縫いを通じてお客様の身体に合わせるという考えをしますから、元来こういった発想には否定的です。

しかし、ブリオーニをはじめ昨今のクラシコイタリアブランド各社は、プレタ(既製品)としてオーダーに負けない物作りをして販売しています。

そこで今回当社は敢えて仮縫いを行わないことをベースに価格設定をいたしました。
 ジャケット単品 63,000円 

とはいえ、当社もオーダー店ですからお客様毎の基本的なご体型の補正は全てお入れした上でお仕立いたしますのでこの点はご安心下さい。

なお、仮縫いを希望される方にはもちろん仮縫いサービスもいたしますのでご希望の方は気軽にお申し付け下さい。
仮縫い+15,000円。太めの方や肩バランスに著しい差のある方は仮縫い付きの方が無難です)

ご注文お待ち申し上げます。