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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!

 本物のフロックコートとは?
5月も終わりが近づき初夏の陽気も随分暑さを感じさせるようになりましたが皆さんお元気でしょうか?
新生活も落ち着き、気持ちが外へ向けられるようになるこれからの時期は、プライベートでは結婚式などにお呼ばれされる方も多いのではないでしょうか?

そこで今月はジューンブライドを前にフォーマルネタ?ということで、よく結婚式で依頼を受けるフロックコートについて皆さんにご紹介したいと思います。
ご登場頂くのは初めて当店でご注文をされるCさん。(Cって珍しいご苗字ですね、、、)

初めはこんなご相談メールから始まります。

09.04.23 件名:問い合わせ
吉村株式会社 様
サイトを拝見いたしまして、質問が御座いましてメールを差し上げました。
フロックコートを長年愛用しているのですが、貴店では仕立て可能で御座いましょうか。
もし仕立て可能で御座いましたら、おおよその価格とも併せてご教示頂けましたらと存じます。 宜しくお願い申し上げます。

東京SHOPMASTERより一言・・・

フロックコートですか...
う〜ん、これは解釈が難しい物をサラッと一言で言われていますね...

読者の皆さんはフロックコートって何だと思います?
一般的なイメージとしては、、、結婚式の新郎が着るようなロングのタキシードライクなジャケットです。
デザインとしては、シングルノッチかピーク襟で拝絹にするか?しないか?デザイン次第といった所で、
一番多いパターンは結婚式用に仕立てられ、式後に上着丈を通常の丈にカットして、その後ビジネススーツとして着用するといった一挙両得型?が多いですね。
画像で表すと左のように仕立てて、式後に右のようにカットするそんな雰囲気のものです。 (2001年頃に仕立てた物ですのでちょっと今風のデザインでなくてスミマセン、、、(^^;)
あぁ、のようなフロックコートね。
これぐらいなら結婚式シーズンを前に時々受けるご注文ですから『ちょちょいのちょいですヨ』と思ったのですが、
でも、こんなドコにでもある物をわざわざ「仕立て可能ですか?」と聞いてくるかな?とも思い、念のため次のようなお返事をいたしました。

09.04.23 件名:大丈夫です。
C様
こんばんは、オーダースーツのヨシムラ(吉村)です。
そろそろGW期間中の天気が気になる時期になって参りましたが如何お過ごしでしょうか?
先程はフロックコートについてのお問い合せを有難うございました。
Cさんは何でも長年愛用しているフロックコートがあり、それに近いシルエット?雰囲気の物をお探しなのでしょうか?

フロックコートは最近は色んな解釈があって言葉と物が一致しない物もありますが、当店でしたら大抵の物でしたらお仕立可能ですのでご安心下さい。
(画像などを頂き、これのここが気に入っている等ポイントを指摘頂けると助かります。)
お問い合せいただいたお値段の方は、イージーオーダーベースでしたら一般的なウールの素材で6〜7万円ぐらい、高級素材を使用して12〜13万前後とお考え頂ければ幸いです。

お役に立てるようでしたら生地探し等もいたしますのでご希望の素材感や色目なども併せてお聞かせいただけると幸いです。
どうぞ宜しくお願いいたします。
簡単ですが取り急ぎお返事まで

オーダースーツのヨシムラ 東京SHOPMASTER 吉村雅隆

すると、早速Cさんからこんなお返事が・・・

09.04.23 件名:Re:大丈夫です。
吉村 様
早速の御回答ありがとう御座いました。
小生の着用しているフロックコートは、本式のモノ(最近インターネット検索で見かける、上着外側にポケットがついていたり、切り返しが無いような、ニセモノとは違います
小生着用のモノは明治時代の政治家が着用していたのと同様の物を思い出していただけましたらと存じます)です。
仙台で仕立て、10年以上、日常的に愛用しているのですが、このたび東京で仕立てようと考えまして某有名店も含めいろいろな店を回りましたが、店員がフロックコートすら知らない(結婚式で着用するようなニセモノ?なら知ってるそうです)、職人が仕立てた経験が無いので仕立てられない等の理由で、なかなか、仕立てられる店が見つけられずにおります。
以上の経緯で、いろいろ探しましたところ、知人より貴店の事を伺いまして、ご連絡させていただきました次第です。

いま着用の物は、職人の腕が良かったのか、10年間、当時仕立てた二着を日々着まわしておりましても、まだ着れる状態なのですが、もう一着仕立てたいと思いまして、ご連絡させていただきました次第です。

1.本来の定義に合致したフロックコートで、
2.仕立てがしっかりしている
この二条件に合致するものを探しております。宜しくご相談に応じていただけましたら幸いです。

東京SHOPMASTERより一言・・・

えっ?本式のフロックコート? やっぱり〜?
ウチに相談される方は他店を一通り調べられてから来られる方が多いですからね...
案の定、本格フロックコートでした。

では皆さん、ここからが当サイトを見て勉強になるところです。
明治時代の政治家が着用していたのと同様の物』とはどんな物か?ご存じでしょうか?
こんなコート(実際は上着)を言います。
(画像はCさんがお使いになっている古いフロックコートです。)

今の政治家は麻生総理のようにスーツにしっかりお金をかけている人もいますが、大抵の議員さん達は残念ながらそれ程のスーツは着ていません。
この辺が仕立屋としては寂しいところですよね。せめて国会開催中は良いスーツを着て貰いたい物です。国民の代表なんですから。
少々、愚痴ってしまいましたが、ご覧いただいて如何でしょうか?

ポイントとしては・・・
1. 燕尾服のように腰に切り返しがあり技術的に難しいです!
2. 背中のダーツがカーブしていて これも非常に難しい!
3. ヒップにふくらみをしっかりつけている じっくりクセ取りしないとダメ!
  といったところが特徴的な所です。

こうなりますと、もうさすがにイージーオーダーでは対処し切れません。
そこでCさんへはフルオーダーの方をお薦めするご案内をいたしました。

09.04.23 件名:フルオーダーのラインでお考えになられた方が良いかも知れません。
C様
オーダースーツのヨシムラ(吉村)です。
今し方は早々にお返事を頂き有難うございました。
フロックコートの件、本式の物とのこと、了解しました。
昨今は結婚式場等かなりいい加減なフロックコート(単なるロングジャケット)などもありますので、Cさんのイメージされる物が良く分かりました。
とはいえ、やはり明治時代からの本格フロックコートとなりますと私共でもデザイン的にそう多く経験している物ではありませんし、燕尾の様に腰で切り返しを付けるようなデザインは縫製面でかなり技術を要しますのでその場合は私共のハンドメイドのラインでお仕立する方が良いかも知れません。
その場合はプラス55,000円程かかりますが、こちらの方でしたらハンドメイドですし、途中に仮縫いをお入れしますので仕立ての点ではまず問題ありません。
大切に使えば10年以上は十分保つと思いますのでご検討下さい。
いずれにしましても、ご注文(相談)の際は今お手持ちのコートをご持参いただけますと助かります。

また生地等リクエストございましたらご予算と合わせお気軽にお申し付け下さい。
ご検討どうぞ宜しくお願いいたします

オーダースーツのヨシムラ 東京SHOPMASTER 吉村雅隆

すると、またすぐCさんからお返事が...
(実はこまでのメール全て一晩でお互いやり取りしています。
私も夜遅くまで仕事することがありますがCさんの熱意には恐れ入ります...)

09.04.24 件名:Re:フルオーダーのラインでお考えになられた方が良いかも知れません。
吉村 様

御連絡ありがとう御座います。
一度、連休中に貴店にお伺いしようかと考えております。
ちなみに、仙台で仕立てた時の価格は、チョッキと上着で12万円でした。今回もそのくらいの予算を考えております。

それにしても、最近は、フロックコートというと結婚式のニセモノしか知らない店が多いのにはビックリしました。
伺いの際は宜しくご相談に乗って戴けましたらと存じます。

追伸:先ほど、貴社のHPで2003年7月の「お客様いらっしゃい」を拝見しました。
文中に「フロックコートのお仕立ては腰の切り返し、背中の絞り等パターンの都合上当店では出来ません。」とありますが、大丈夫でしょうか。
銀座や表参道のテーラーでも「当店の職人の技術では出来ない」と言われることが多かったのでその点を案じております。

東京SHOPMASTERより一言・・・

そうですよね、、、
最近売られている物で本格フロックコートなんて見たことありませんから、お店の人も知る由もないんでしょう。

2003年頃の当店はまだ三久服装と出会っていませんから出来ませんでしたし、私もこれまでは物の本やビンテージ物関連で見たぐらいですから。

でも、今はもう大丈夫です。
吉井工場長もフィッター中島氏も当然のごとく存じあげておりました。

さてさて、
これだけのメールを2日でやりとりし、急速にご注文が進んでいったCさんのフロックコートですが、その後、GWの谷間4月30日にご来店され、最終的にはこんなオーダー内容になりました。

■ フロックコートのご注文内容 ■
1.ベース
>>> ベースとなる物はCさんご自身がお手持ちのフロックコート。
凄く年季が入った物でしたがハンドメイドで作りが非常にしっかりしていました。
ただ、脇など裏地の解れ・傷みがありましたので見本服として預かる過程でかるくお直しすることにしました。

2.生地は・・・   BF606
>>> 生地は国産の中ではフォーマルに強い児玉毛織のタキシードクロス。
これを普段使いにするのがCさん流なんだそうです。

3.デザインは・・・  ダブルブレスト6つボタン2つ掛け
>>> 伝統的なフロックコートのデザインです。
中には襟にサテンのトリミングを付けた物もありますが、今回は普段使いなのでこのようになりました。

4.ボタン   特製フォーマルくるみボタン
>>> 袖ボタンは“なし”の筒袖タイプ
普通フォーマルのボタンというと共布で作ったくるみボタンですが、付属屋さんを回って特製くるみボタンを見つけそちらにしました。

いかがでしょうか?
本格的フロックコートの出来上がり楽しみですね。
次回は出来上がりの他、仮縫いシーンなどもご紹介したいと思います。

そろそろ、結婚式シーズンです。
式後に着丈を短くして普段使いスーツにするのも良いですが、一生に一度の想い出を形に残して、自分の子供に着て貰う!なんて思いでこういったフォーマルを1着仕立ててみてはいかがでしょうか?

■ お ま け 話 ■
Cさんはどうやら3月にご紹介したお客様ありがとう『参加者総勢20名レディース燕尾服』辺りから当社サイトを調べられたようです。

Cさんのご注文とは別になりますが、の燕尾服をご紹介した際、某(?)自衛隊にお勤めのMさんからこんなメールを頂きました。

09.04.29 件名:HP拝見しました。
今回の内容は非常に興奮した内容でした。
以前からお店で吉村氏より伺っていた、女性用の燕尾服がやっと登場してくれた、という感じです。

もううっとりするくらいの仕上がりで、これが大阪店での納品でなければ、お店へ現物を拝見しに行きたかったくらいです。
確か燕尾服の話題は私がダンスをしているということから始まったのかな?と思っているのですが、もしかしたらフルオーダーでノーベル賞受賞者の燕尾服も仕立てた、ということからの話題だったのかもしれません。
ダンスでは当分燕尾服なぞほど遠いレベルで、記事の最後のSHOPMASTERのセールス(笑)に反して、一生縁がないままかな、とは思ってしまいますが憧れではあります。

ところがです。
記事の中のタキシード向上委員会でもちらっと触れていたり、吉村氏が会話で何度か仰った、我が本拠地(笑)市ヶ谷にあります洋服会館で展示されているという旧軍の大礼装、あれほどにはモールで飾りつけはされていないですが、メスジャケットの礼装の設定が幹部にはあります。

大礼装レンタルパンフレットより

これからの時期、洋服会館の正に隣のグランドヒル市ヶ谷ではこれに身を包んだ新郎が大勢鉢合わせしている状態になると思います。
あれは3万円ほど出して使い回しをレンタルしており、長年の使用によってかかなりクタクタになっており、なんとも寂しい状態です。
披露宴の時か、あるいは駐在武官となり海外でのレセプション出席の時位にしか着用する機会がありませんので当然といえば当然なのかもしれませんが。
かく言う私も、やはり(概念としての(諸事情がありますので(笑))軍人の流れが染み込んできたのか、大礼装には惹かれるものがあります。

まぁ、着用機会を生み出す努力が先なのですが。
やはり軍人の、それれも士官であれば大礼装にサーベルを帯刀してみたいものではあります。
大礼装。
機会があれば・・・ お仕立ての相談に伺う日が来るかもしれません。
燕尾服と違って、それこそ仕立てた機会が、稀を通り越して皆無になり無茶なお願いなのかもしれませんが・・・

いやいや、お客様コーナーでのご紹介が色んな所に派生していってこの仕事は面白いです。
皆さんも色々と是非想像してみてください。

それではまた!