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オーダースーツのヨシムラ
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 季節の変わり目は水洗いを
そろそろ季節の変わり目で体調管理をはじめ着る物も選ぶ時期になりましたが読者の皆さん如何お過ごしでしょうか?

この時期は、長くお世話になった前シーズンのスーツ・ジャケット達に半年の別れを告げる時でもあります。

それでは早速水洗いについてご紹介。
皆さん、スーツのクリーニングってどうされていますか?
一般的には、クリーニング屋さんで行うドライクリーニングですよね。

でも、それがどのような物かご存じでしょうか?
なかなか教えてくれる物ではありませんのでまずはそこからご案内。。

■ ドライクリーニングとは・・・? ■
普段私達が何の気なく利用しているドライクリーニング、これは石油系の溶剤を使って洗浄しています。
このため、洗剤が石油系(つまり油)ですから、油脂系の汚れには効果的で食用油・機械油・ペンキ・口紅・ボールペン・マジックインキ・靴墨などは良く落ちます。

でも、この具体例 皆さんの生活の中で頻繁に付く汚れでしょうか?
ビジネスマンにとってはボールペンの跡などは良くありがちですが、それでも薄グレーのスーツならいざ知らず濃紺スーツにはあまり意味がないのではないでしょうか?
水洗いで落ちる汚れについては後述しますが、このようにクリーニングではそれぞれの方法の違いにより落とせる汚れと落とせない汚れがあることを知る必要があります。

また、ドライクリーニングは既に説明したように石油系溶剤で汚れを落としますが、その溶剤は一回ごと使い切りでしょうか?
いえいえ、実は何度も使い回しています。
イメージすると、天ぷら油や健康ランドの循環湯システムです。
つまり、フィルターを使って濾過して何回も繰り返し使うことでコストを下げているのです。
日曜日の夕方の健康ランドのお湯はどこかドロっとしていますがあんな感じです。

以前、クリーニング専業者さんに直接伺いましたが、悪質なクリーニング屋の場合はその溶剤がコーラのような色をしているそうです。
また、この様なクリーニング屋では白のセーターをクリーニングすると逆に薄汚れて帰ってくるそうですよ。
(若干、ドライクリーニング業界を悪く言っておりますが、業界関係者の方悪しからずご容赦下さい。)

■ 汚れの種類と対処の方法 ■
それでは汚れにはどんな物があるのでしょうか?
今回はドライと水洗いの比較が重要ですので、分けて表にしてみました。。
ドライクリーニングと水洗いではここが違う
落とせる汚れ
服地への影響
プレス
ドライ
クリーニングで
落とせる汚れ
食用油・機械油・ペンキ・口紅・ボールペン・マジックインキ・靴墨
回数を重ねると服地が目詰まりし風合いを損ねることがある。
型崩れが少なくプレスしやすい。
水洗いで
落とせる汚れ
汁・お小水・食べこぼし・お茶・コーヒー・果汁・醤油・ソース・血液
服地の風合いを損なわず天然素材が甦る。
プレスに技術と手間を要する
いかがでしょうか?
どちらかというと、私達の日常生活では水洗いで落とせる汚れの方が、ありがちな汚れではないでしょうか?

ふと、考えてみるとこんな経験をしたことありませんか?
長く使っていたスーツで、
脇の辺りに汗ジミが出来てドライクリーニングで落ちない×××
...これは上記の表に当てはめるとごくごく当たり前のことなんですね。
水溶性の汚れですから...

■ 何故水洗いが普及しないの? ■

汚れの種類を考えてみると水洗いの方がドライより落とす汚れとしては日常生活に近いのに、それでは何故水洗いが普及しないのでしょうか?

洗剤の問題
・・・確かにこれは家庭用洗剤では心もとないですが、最近は花王のエマールなど良い物も出ておりますのでそういった専用洗剤を使えば、これはそれほど問題ではありません。
  >>ご参考:花王エマール(スーツの水洗い)

一番の問題は?
...それはプレス技術の問題裏地等の縮みの問題です。
これに充分対処するためには高度な技術力と時間を要するためなかなか一般に普及しないのです。

それでは具体的に2つの問題はどんなことかと言いますと・・・

プレスの問題
当たり前のことですが、水洗いは洗い上がって干した後はシワだらけになりますから、これをプレスするのが大変なんです。

このことは、ドライクリーニングでも、ご家庭でも言えることです。

そして、ドライの方はクリーニング屋さんは洗濯もプレスもプロですのでご家庭でやるよりは段違いで安定したプレスができます。

しかし、残念なことにクリーニング専業店ではスーツの構造や作り方などへはあまり関心が向かないため良いプレスが出来ないのです。
この点、仕立屋のプレスならスーツの作り方からアイロン掛けの方向までキチンと理解しているためオリジナルに近い状態まで持っていくことが出来るのです。

例えばこんな事はありませんでしたか?

3つボタン中掛けデザインのスーツをクリーニングに出したら
3つボタン上2つ掛けになってしまった×××
...これは上記の表に当てはめるとごくごく当たり前のことなんですね。
水溶性の汚れですから...

『襟のプレスを柔らかくして欲しい』と言ったケド、
理解して貰えなかった×××
これでは折角のスーツもオリジナルの原型が分からなくなってしまいます。

その点、仕立屋のするプレスは「洗うこと」のみならず『スーツのメンテナンス』の位置づけですから元通り復元することに主眼が置かれているのです。

縮みの問題
スーツの水洗いで意外と見落とされがちなのは『縮みの問題』です。(先述エマールのHPでも水洗い後縮むことについては殆ど記載していません。)

それでは水洗いによる縮みとはどんな物なのでしょうか?
・・・実は、これは生地(表地)の問題もさることながらむしろ裏地の問題です。
表地の方は、仕立てる前には「地のし(地直し)」という作業を行い、縮む要素のある生地は充分縮ませてからお仕立てに取りかかるのでステッチ糸の縮みに関する事以外ではあまりこのような事は起こりません。
ですが、裏地の方は一般には何もしないままお仕立てします。
(これは当店でもそうですし、他店でも同じと思います。)

何故?と思われるかも知れませんが、特にキュプラの裏地などは地のしによって当初の光沢感が薄れてしまう傾向がありこれを嫌がっての事です。(あるいは面倒なだけか...)
このため、スーツを水洗いすると(特にキュプラの裏地を使った物は)少なからず裏地が縮んでしまい、そのまま乾燥、プレスをするとスーツの裏地側(内側)が短くなるため、裾が内側にロールしてしまいます。

それではどうすればキチンと収まるのか?
××× それは面倒ですが一度裏地を解いて縫い代を出してやるしか手だてがありません

既製服はどうか分かりませんが、例えば当店の仕立てではスーツの裾裏の裏地は縫い代を多少多めに取り後々の補修に対処できるようにしています。
ですから補修の際にはこの縫い代をうまく利用するのです。

さすがにここまではご家庭では無理です。
これが仕立屋による補修の凄いところです。
読者の皆さんはなかなかイメージが沸かないと思いますが、補修というのは大変な作業で、一度出来ている物を解いて、それを補修して、また縫製する訳ですから、意外とコストが掛かるのもうなずける話です。

■ 仕上がりはどうなるの? ■
長々とドライクリーニングと比較したり、問題点を説明してみましたが、それではどんな仕上がりになるのでしょうか?

仕上がりというのは風合いが問題になりますのでなかなか画像では表現できませんが、こんな感じです。

□ 汚れはどれ位落ちる? □
画像は水洗い前後の洗剤液の状態。
画像左側は透明ですが、右側は白濁色ですね。
実はこれは私のスーツを洗った際の洗剤液。
2シーズン着用し、その都度ドライに出していたスーツを洗った結果がこうです。
専門家に言わせるとドライの場合は『ドライかす』が溜まるそうです。)

そしてこちら<<タバコを吸われる方のジャケットを洗ったときに出た汚れ。

う〜ん、見るからに『ヤニ』が出ていますね。

続いて、こちらはレディースのアンゴラジャケット
メンズでは珍しいですが白のジャケットは汚れが特に目立ちやすいので実験台に使わせて貰いました。
白の物は程度の良くないドライクリーニングだと逆に「ドライかす」で汚れることもあるそうです。
洗うに際のポイントはポイントは・・・
首周りの汚れ
シャツがあるとはいえ、夏場は汗をかきますから結構襟は汚れます。
レディースではお化粧による襟汚れが日常的に起きています。
脇部の汚れ
脇は汗をかき、それを生地が刷っているため汗じみ等結構汚れます。
ポケット周りの汚れ
仕事着で着ているとポケット周りをペン等で汚すことがありますがこれも落ちます。
ホコリの吸着
白ですととても目立ちますがこれはどんなスーツでも同じ事。
春先、車がアッという間に花粉で汚れてしまいますが、一日営業で外に出るとこれと全く同じ事がスーツに起こっています。
生地の場合は織りの奥底へそれは溜まっていき、生地は呼吸困難を起こしてしまい風合いが劣化します。
毛並みの回復
冬物など肉厚の素材はどうしても使っていく内に生地が押し潰されていきます。さてさてこれがどれ位回復できるでしょうか?
汚れの特に酷いところは洗浄液の原液を塗って...
洗った後、乾燥するだけだとこんな状態
それ後、補修を行ない、1着1時間〜1時間半もタップリ時間をかけて最終プレス。
作業はハンドメイド工場工場(三久服装)にて行います。

こうして、仕上がりです。
こんなに綺麗になりました。
襟裏は場所がら汚れが付いていないですのでその色と比較してみてください。
どうでしょうか?見違えるようになったでしょ♪

■ お申し込みはこちらまで ■
こんな手間の掛かるスーツのメンテナンス(敢えて「水洗い」とは言いません!)、いかがでしょうか?

□ お 値 段 □
品名:メンテナンス:シングルスーツ上下
品番:maintenance01 お値段:6,825円(税込)

品名:メンテナンス:スーツ上下+ベスト(3ピース)
品番:maintenance02 お値段:9,450円(税込)

品名:メンテナンス:コート
品番:maintenance03 お値段:9,450円(税込)

品名:メンテナンス:スーツ保管サービス(6ヶ月以内)
品番:maintenance04 お値段:1,050円(税込)
   ※保管サービスのみ送料を含みます。

※:ジャケットは上下価格の65%、パンツは35%です。
※:お送りの場合は送料として525円頂戴いたします。(2着目以上は無料です。)


いかがでしょうか?
最終的なプレスの段階ではハンドメイドの職人達がフルオーダーと同様のラインでプレスを行なうこのメンテナンス。
ここには日本のテーラリングの技術が残っています。

毎回の水洗いは必要ありませんが、少しくたびれてきたかな?と思ったとき是非当店のスーツのメンテナンスを思い出してみてください。