|
 |
|
９月のお客さまありがとう！：並列チェンジポケットの行方は？ |
| 『９月のお客さまいらっしゃ〜い』でご紹介したＦさんの超こだわりスーツがようやく出来上がりました。 一時は喧嘩別れの危機もあったＦさんとのやりとりでしたが、皆さんのご想像に反し?!無事採寸が終わり、採寸日の翌日こんなメールを頂きました。 |
|
|
件名：今日は（も）お世話になりました。 | |
| こんばんは、オーダースーツの件で本日店舗にお邪魔したＦです。 先ほどは長時間、こちらのわがままを聞いていただき、本当にありがとうございました。 こちらの望みを一つ一つあげてゆくと、随分ワガママオーダーだったのだな、と、改めて思い至りました。 お断りいただいても決して文句はいえないわがままにも関わらず、お引き受けいただき、さらには「責任をもった仕事をしたい」とおっしゃっていただき、感無量です。 皆さんのおかげで、きっといいジャケットとパンツに仕上がってくると、今から楽しみでなりません。 吉村さんのおっしゃったとおり、確かに（不特定多数が見るWebページには）不適なオーダー内容ですよね。 約２時間にわたってお付き合いいただいた会話のすべてを文章にしたら、とんでもないことになりそうです（苦笑）。 なんだか、こう、オーダー工場（そしてもちろん吉村株式会社のみなさん）に対する挑戦状、のようなオーダーになってしまいました。 本日はどうもありがとうございました。 今後ともよろしくお願いいたします。 |
| とまぁ、何とか採寸は無事終了しました。 でも当店はこれからが仕事の始まり！ご注文を頂いたからといってこれで『オシマイ』ではありません！ ご注文のチェック
それでは今回のＦさんのご注文のポイントだけ整理すると･･･ |
さてさて、それでは出来上がり写真をこだわりパーツを中心に解説しますと･･･
これは正直なところ、Ｆさんには「絶対にできないです！」と言い切っていたパーツでした。 『肩線が後ろに向いている』デザインというのは昔からあるとてもクラシカルなデザインのひとつなのですが、現在はよほどのこだわりのあるデザイナーでない限りは行っていないデザインです。 色々と調べてみましたがこの秋冬では元エルメスのデザイナーだったフランシス･ロザスが展開しているVALENTINO ROMAだけだと思います。 また、これは技術的には出来ることでも型紙から起こさなければいけないため、技術うんぬんもさることながら、１人のご注文の為に新しい型紙を作り直すという手間ヒマの点で難しい『こだわり』でした。 で、工場の方へダメ元で交渉したところ･･･ 『やるだけやってみます！』との職人気質の嬉しいお返事が来まして、こうなりました。 |
| 凄い！凄い！ 皆さんから見れば簡単に見えると思うのですが、実はイージーオーダーの縫製工場でここまで融通を利かせてくれるのは本当に珍しく、またフルオーダーの技術が残っている上でイージーオーダーの工場を運営している証拠だと思いました。 工場長！ありがとうございました！！ （後日談ですが、この肩線処理はここの工場でももはや出来る職人が数人しかいないとのことで、大変申し訳ないのですがこのページをご覧になりご注文されたい方がいらしてもお断りせざるを得ないこともありますのでご容赦下さい。）
･･･これまた、簡単に出来そうで、出来ないことでした。 というのも、よくよく見れば分かることですが、胸の部分にはダーツが入っていてこれをどうよけるかが結構難しかったです。 
また、腰ポケットの横にチェンジポケットを付ければ当然腰ポケットは横（後ろ）へずれるし･･･でも、出来上がりの方はどうですか？ 結構格好いいでしょ！！ このこだわりパーツはＦさんが定期券を入れるためのものだそうです。 普通のチェンジポケットでは小さすぎるし、位置が高いので実用的でない。 そこで考え出されたアイデアなんです！･･･こんなことを考えるＦさんに脱帽です！
 フラワーホール（襟に付いている社章などをつけるところ）から第５ボタンまでのボタンホールを等間隔で付けて欲しい！、と言われた時、正直『なんで？そんなトコまでこだわるの？』と率直に思いました。 でも、これがイラストレーターなどの細かい仕事をしているＦさんの飾らないこだわりなのかも知れません。 『フラワーホールとボタンホールは大きさも縫い方も違うのに･･･』などとぶつぶつ言っていたことは忘れて、頑張って工場へ依頼しました。 工場もさぞかし驚いたことでしょうね。 また、この部分はＦさんの別のこだわりである『襟を開いたら１直線になるように』というこだわりもある程度満たしていまして、実は写真のように襟を開いてみると、ボタンホールが等間隔なのはもちろんですが、襟の返りが普通のスーツより少なくなっています。 直線とまでにはいきませんけどね･･･
本切羽額縁仕上げ、上着の丈を長くすることでのポケットの位置の調整etc... 本当は皆さんにご紹介したいことはもっともっとあるのですが、紙面の関係で別の機会でご紹介したいと思います。 ところで、こんなこだわりのＦさんからご感想のメールが届きましたのでご紹介します。 |
|
|
件名：わがままジャケットのデビューです！ | |
 |
おはようございます。Ｆです。 先日はあんなにわがままなスーツをお仕立ていただき、ありがとうございました。しかも、閉店近くにお忙しいときに伺ってしまいました。 頂いたスーツの方は、昨日は雨だったので着る気がせず、今朝はじめてデビューと相成りました。 なんといっても着た瞬間に肩から袖にかけて、非常に楽なのが嬉しいですね、 また、いままで体に合っていると思って着ていた既製品ですが、一度吉村さんに作って頂いたものを着た後では、実はきちんと体にフィットしていなかったのだな、と改めて感じてしまいました（苦笑）。 お仕立ていただいたジャケットですが、こちらの希望をすべて盛り込んで頂いた上に、着た際の自然な着用感、非常に満足＆感謝しております。 チェンジポケットの並列も、実際使ってみると非常に機能的です。 また襟から前身頃にかけての芯地がしっかりしているためか、生地がしなやかなのに非常にしっかりとした頼りがいのある仕上がりになっていて、さすがオーダーだなと思いました。 本当にありがとうございました！ では、今後ともよろしくお願いいたします。 |
| 日記帳の所にも書きましたがＦさんのスーツの引き渡しの際にはたまたまご来店の方が多く、皆で出来上がりの品評会をして大好評でした！！ Ｆさん、足掛け２年、SHOPMASTERとの喧嘩も乗り越え、ご注文をありがとうございました！ なお、今回のＦさんのご注文では当社の指定工場の１つである『協業組合青森オーダーソーイング』さんに全面的にご協力頂きました。 同社はいわゆるイージーオーダーの工場ではありますが、前身が青森県内のテーラーさんの組合から発展した会社ですので技術力はしっかりしています。 Ｆさんをはじめ、読者の皆さん、また吉村株式会社の代表として厚くお礼申し上げます。 木村工場長！ありがとう！ （この調子なら、『お客さまありがとう』コーナーの他に、『縫製工場ありがとう』コーナーが出来るかもしれませんね！） |