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ジェンダーレススーツの仕上がり


こんにちは。大阪店の西脇です。
10月に入り、一段気温が下がり、本格的な秋の訪れを感じますね。
さて、先月のレディースコラムでは私のオーダー内容についてご紹介させていただきました。
今回はそのスーツが仕上がってまいりましたので、どのような仕上がりになったのか、ご紹介させていただきます。

ジェンダーレススタイルをオーダーで

1. 今回のテーマ “ジェンダーレス”

今回の私のテーマは、 “ジェンダーレス” でした。
従来のレディーススーツに多い女性らしい身体のラインを強調したデザインでなく、身体のラインを出さないシンプルでミニマル、大きめのサイズ感、デザインを意識しました。
男性の骨格と大きく違い、身長も高くない私が、敢えて大きめのメンズパターンを採用し、成立するバランスを探りました。

まずは全体像を見ていただきます。仕上がり品はこちらです。

いかがでしょうか?私の中では細かい改善点はあるのですが、ジェンダーレスの雰囲気は少しは出ているのではないでしょうか。

2. 仕様のご紹介

改めて今回の仕様の詳細を簡単にご紹介させていただきます。

パターンやシルエットはメンズパターンを採用しておりますが、中の芯などはレディースの仕様で調整しております。
前回ご紹介できていなかった点で、ポイントとなるのは、補正や袖巾を細かく指定している点です。やはり、ビッグシルエットをそのまま着るだけでは綺麗に見えないと考え、0.5cmの単位で色々と変更を加えていきました。
また、ジャケットの前釦は1つ釦にしました。これは釦位置を下に設定したので、低身長の私では2つ釦ではバランスがとるのが難しいと考えたためです。(女性がスーツを着る時は男性と違って、基本的にはすべての釦をとめる、というルールがあります。)
1つ釦のジャケットはメンズのデザインではほとんどないため、結果的に少しレディースの要素が+されました。

3. 想定を外れたこと、着心地について

そして仕上がって着てみて、初めて理解したこともありました。

◆ジャケット

まず、メンズの仕様でしかない、お台場仕立てに関しては、思った以上に胸の厚みを感じ、シルエットに硬さが出ることがわかりました。
また、着丈やサイズを大きくして表地を多く使っているからか、生地自体はそんなに重たくないはずなのに、首~肩にかかる重さがいつもと違って感じます。

つまり、中の芯に関してはレディースの芯にしたものの、思った以上の柔らかさが出ませんでした。
重たく感じ、正直、着心地も、普段自分に合ったサイズ感のスーツよりは良いとは感じません。

クラシコ仕様の特にお台場仕立てに関しては、着心地より裏のデザインを拘りたい方でない限り、女性にはおススメしないかな・・・というのが正直な感想です。

反対に、男性で構築的なスーツが理想だけど、少し軽くしたいという方は、このようにクラシコ仕様で、レディースの芯を使ってみられるのはいいかもしれません。

◆スラックス

ワイドシルエットのスラックス、BOX+1タックについては、リラックス感が出て、かつ動きやすく、シルクのような肌触りの生地感も相まって、非常に快適です。

タックは座った時などに、ヒップ周りにゆとりが出ます。ウエストとヒップの差寸が大きいレディースの方、デザインがお気に召せは、BOX+1タックはかなりおススメです。

4. スタイルの応用

今回のジャンダーレススタイルのように、ゆとりのあるシルエットは、意外とスーツでも、単品でも使えます。実は、光沢の強い生地はジャケパンスタイルには敬遠されがちです。なぜなら、“スーツ感”が強く出てしまい、上下でちぐはぐになるからです。その素材のちぐはぐ感に関しては、中のインナーや小物を変えたりすることで統一感を出すことができます。

普通のスーツと違い、重心を下げたゆとりのあるシルエットであることがポイントです。いい意味でルーズさが出て、ジャケパンスタイルに落とし込めるのです。

そしてビッグシルエットのジャケットは、ウエストマークをすることで、一気にトレンド感が出ます。

5. まとめ

さて、今回のコラムはいかがだったでしょうか。

ジェンダーレスなファッションについては今後、需要がますます増えていくような気がしています。なぜなら、働き方の多様化、個性の表現の多様化によってかっちりしたビジネススーツというより、様々なシーンで着回しができ、自身のスタイルを表現できるスーツが求められているからです。

特にジェンダーレスなゆとりのあるサイジング、ミニマルなデザインはビジネスからカジュアルまで着まわせる汎用性があります。ですが、既製品ではなかなか理想のバランスの着丈やスタイルが見つからないのが現状です。オーダーであれば、身体にフィットさせるところと、敢えてサイジングを無視した理想のシルエットを、バランスを見極めながら、作り上げていくことが可能です。

自身の身体にしっかり合っている方が、着心地もよく、美しいシルエットを考えやすいのは事実ですが、理想のスタイルを表現するために敢えてシルエット重視のサイジングに挑戦するのも楽しいです。
レディース・メンズ問わず、ジェンダーレスなスタイルのご相談、大歓迎です。

ビジネスシーンだけでなく、ファッションとして、自分の個性を表現する手段として、オーダーを楽しんでいただくために、今回の記事が何か少しでもご参考になれば幸いです。
それでは、また次回をお楽しみに。


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