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雪とヴラマンクとCloud Dancer


こんにちは。大阪店の西脇です。
2月に入りました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、先日、私の住んでいるところでは雪が積もりました。
静かな白い世界。

その光景を見た時、想起されたのが、
PANTONE社が発表した2026年のカラー、"Cloud Dancer" と、ヴラマンクの絵画でした。

PANTONE社によると、“Cloud Dancer” は静かな心で、空白のキャンバスを作成する色。
静けさ、包容力、創造的な探求のためのオープンな姿勢を表現する色としてこの色が選ばれたとのことです。

今回のレディースコラムは、この今年を象徴する色の哲学と創造というテーマで、少し抽象的になりますが、お届けしたいと思います。

1. ヴラマンクの雪景色 ー 白の重み


Maurice de Vlaminck, 雪景色, 1920~

モーリス・ド・ヴラマンク(Maurice de Vlaminck)は19世紀末~20世紀初頭のフランスの画家です。

フォーヴィスム(野獣派)の一員として激しい色彩表現で知られていますが、 晩年は、このような重厚な風景画を多く描きました。

フォーヴィズムは、写実主義とは異なり、感覚を重視し、心で感じるものを表現する主義です。

この絵の中の雪は、決して軽やかではありません。 重たい空、冷たい風、静かな村。
雪は、ただ白いのではなく、 グレーや青が混じり合った、複雑な色をしています。湿度を含んだ空気の質量がその筆跡から感じられるようです。
塗り重ねられた雪の白、濁らせた空の白、白という色は軽やかさを出すためではなく、重さを出すための白。

ヴラマンクの雪景色を見ていると、白は、まっさらな色ではなく、意志、感情を含ませる、すべてを含んだ白、のように感じます。

2. “Claud Dancer” - 解放の白

改めて、“Claud Dancer” という色について考えてみます。

パントン・カラー・インスティテュートのバイスプレジデント、ローリー・プレスマンは次のように述べています。

「私たちが今生きているのは進化の時代なのか? それとも激変の時代なのか? 議論を重ねた結果、私たちは今、そのどちらでもなく、“過渡期”を生きていることに気づきました、私たちは今、真実を求めています。そしてあらゆる可能性を探っています。
『なぜこんな世の中になってしまったのか。どうすれば全てをリセットできるのか。』
ありとあらゆる出来事が起こっていて、すべてをやり直すために新しい生き方を探っています。刺激も何もかもが多過ぎるこの時代からの解放を求めているのです。」

そしてこの「過剰な時代からの解放」を表すカラーとして選ばれたのが、“Claud Dancer”(クラウドダンサー)という名の色です。

「私たちは充足感、調和、安らぎ、一体感、そして結束力を求めていて、“Claud Dancer” はその願いをうまく色に昇華しています。純白ではなく、自然な色合いの白です」と、プレスマンは付け加えました。

パントン・カラー・インスティテュートのエグゼクティブ・ディレクター、リー・アイズマンが「新鮮な空気を吸い込むような、安らぎを感じさせる高貴な白」と表現しているように、“Claud Dancer”は、情報に溢れかえる時代の中で、私たちが安らぎを感じるような色、ノイズからの解放、そして新たなクリエイティブな心を刺激する色でもあります。

3. スーツの創造性について

雪解けのこの季節、春夏のシーズンの立ち上がりがもう目の前に迫っています。
この白の哲学からインスピレーションを受けて、新たなスタイルを考えるのはいかがでしょうか。

ここで、私が以前仕立てたスーツをご紹介します。
DORMEIUL Amadeus 365の3つボタンのシングルブラックスーツです。

この生地は365日着られるという名の通り、3シーズン対応の生地で、美しい艶と自然なストレッチ性を兼ね備えています。

レディースの3つボタンスーツというと、クラシカルでレトロな雰囲気があるかと思います。時代性を醸し出すコードとして3つボタンを選択したのではなく、あくまでどのようにスーツを着たいか、ミニマルなスタイルを考え、この形にしました。

【仕様のポイント】

生地:DORMEUIL Amadeus 365 Black

<ジャケット>

  • シングル3つボタン
  • ノッチ衿
  • くるみ釦
  • 細身シルエット
  • 裏地 キュプラ ペイズリー チャコール

<スラックス>

  • 微フレアシルエット
  • ノータック
  • ベルトレス

このスーツはシャツやブラウス、アクセサリーをまとわずに、スーツだけで完成するスタイルをイメージしてお仕立てしました。

生地の美しい艶を引き立たせ、構築的なシルエットになるように、着丈、ウエスト、身巾を計算し、袖巾、アームホールもできる限りの補正を入れています。

そして、最大のポイントは3つボタンの釦位置です。Vゾーンの余白を狭くし、着丈とのバランスを考え、釦の位置と釦の間隔は指定しています。

白という色が様々な哲学を内包し、無限の可能性や創造性を示唆するように、まっさらなスーツ地から様々なスタイルのスーツをお仕立てすることが可能です。

情報があふれるこの時代ですが、自身が心地よいと思うもの、心ひかれるもの、身体に合っているもの、そういった基準に立ち返り、大切にすることを白という色は教えてくれるように感じます。

2月。まだ寒さが残るこの季節に「新しい年の始まり」を感じなおす、そんな時期かもしれません。

次のお仕立て、是非お気軽にご相談ください。皆様のご来店を心よりお待ちしております。


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