こんにちは。大阪店の西脇です。
早くも桜が散り、新緑が芽生える季節になりました。
春という季節とスカートは相性がいい気がします。
気温が上がり、自然が芽吹き、花を咲かせ、生物たちも動きが活発になる季節——
スカートの軽快な雰囲気、空気を孕む佇まいが、春の新しいスタートや希望や期待感を含む空気感と同調するような気がするからです。
今回のレディースコラムでは、スカートに焦点を当て、オーダーならではのスカートスタイルについて掘り下げていきたいと思います。
スカートのオーダーというと、長さとフレア感の調整だけで、わざわざオーダーしなくても……という方もいらっしゃるかもしれません。またレディースのスーツというと、スカートスーツよりもパンツスーツの方が既製品でも主流になってきました。
しかし、シンプルだからこそ、自分の身体に合ったバランスや、狙ったイメージを投影しやすいのがスカートだと思っています。
スカートは腰から広がる布が内側に空間を抱え込む、建築のアーチやドームにも似た構造を持っています。
外から見えるシルエットは、中にどんな空間を生み出しているかと表裏一体です——そんな視点でスカートのバランスを考えてみると、オーダーの醍醐味がより鮮明に見えてくるように思います。

Le Corbusier 出典:Lecorbu in bnç
建築家 ル・コルビュジエは、人体が黄金比でできていることに着目し、それを建築の寸法設計の基準にしました。
スカートのウエストラインも、身体全体のプロポーションを分割する一本の水平線です。丈をどこで終わらせるか、フレアをどの角度で広げるか——それは感覚的な好みであると同時に、身体のプロポーションを設計する構造的な判断でもあります。
今回は、そんな視点から、お仕立ていただきました4着を考察し、ご紹介します。
まず、初めにご紹介するのは、企業向けの講師をされている女性のお客様のスカートスーツのお仕上がり品です。
生地はソラーロ——イギリス発祥のウール素材で、縦糸と横糸に異なる色を用いた独特の綾織りが、光の当たり方によって色が変化して見えるのが最大の特徴です。グリーンとも、カーキとも、時にブロンズのようにも見えるその表情は、固定された色ではなく、場の光と対話するような美しさがあります。
こちらのスーツは黄金比の「正しいプロポーション」に収まったバランスのよいシルエットでありながら、ソラーロ特有の光による色の変化が、かっちりとした構築感に柔らかな揺らぎを加えています。
スカート丈は膝下くらいで、ヒールのないシューズでも美しく見えるように丈を確認させていただきながら設定いたしました。
ジャケットの直線的なラペル(衿)や前のスクエアカット、ハッキング(斜めの角度)の腰ポケットが構築的なプロポーションと合わさって、シャープな雰囲気があります。
講師というお仕事柄、聴衆の前に立つ場面が多い。人前に立つとき、その人の佇まいや印象は、場の空気をつくる大切な要素のひとつだと思います。光の角度で表情を変えるソラーロのスーツは、どんな場にも動じない芯の強さと、場に応じて自然に溶け込む柔軟さを、同時に纏えるような一着ではないでしょうか。
こちらはメールにてオーダーをいただいた一着。
生地はLoro Piana SUMMER TIME。ウール・リネン・シルクの混紡で、繊維の異なる光沢感が重なり合い、品のある微光沢を生んでいます。
スカートのタイトなシルエットが身体のプロポーションを素直に表現しながら、素材そのものが温かみと上品さを加えています。タイトスカートは構造的にはスカートの中では最も装飾がないといえるシルエットです。
日照時間の短い北欧では、建築家たちは光をいかに美しく室内に引き込むかを設計の核心に置いてきました。
装飾を削ぎ落とし、構造と素材だけで空間を成立させる
——タイトスカートという最もシンプルなシルエットと、Loro Pianaの微光沢素材の組み合わせには、そんなプロポーションの知性と素材の感覚的な豊かさが共存しているように思います。
続いてご紹介するのは、男性のお客様のスカートスーツのお仕上がり品です。大学の卒業式用にお仕立ていただきました。
生地はCANONICO Super 110's。ブラックの無地に見えて、近づくと小さなドット柄が浮かび上がります。遠目には端正に、近くでは密かな個性を宿しています。
床に向かって広がるマキシ丈のAラインは、黄金比を大きく超えた丈感です。またスカートの裾回りも指定し、セミフレア~フレアの間の裾回りにしました。
ゴシック聖堂が人間の尺度を超えた垂直性によって、見る者に別の荘厳な感覚を呼び起こすように、このスカートもまた、空間そのものとして存在するような佇まいがあります。
これは、敢えて黄金比を逸脱したスカート丈とジャケットのコンパクトさがポイントになっています。ダブルのジャケットの丈感は短く、ゆとり量は少なくし、釦の位置を指定。ポケットのフタをなくすなど、無駄な装飾は排除しています。
黄金比に従うことが美しさの条件ではない——この一着は、そのことを静かに、しかし力強く証明しています。

COOL MOTION
@yoshimura_sons_osaka Instagramより
最後は、スカート単体でのお仕立てをご紹介します。
素材はCotton70%・Polyester30%の機能素材のCOOL MOTION。接触冷感・吸水速乾・ストレッチ・ウォッシャブルと、実用的な機能が揃っていながら微光沢がある素材感です。
バウハウスのデザイナーたちは、装飾を削ぎ落とした先に「過不足のない形」を求めました。
セミフレアとタイトの中間というシルエットも、そんな思想と重なります。
広げすぎず、絞りすぎず——動きやすさと品のある佇まい、ふたつの要求が交わる一点を探した結果の形です。
このシルエットはピンクという色の甘さを少し抑えることにもつながっており、この微妙な匙加減はオーダーならでは、です。
グレーのジャケットなどとも相性がよく、カジュアルなシーンから少し改まったシーンまで、幅広くお使いいただけることを想定しています。
機能素材特有の無機質さが、微フレアのシルエット、ピンクという色合いによって、柔らかく和らいでいます。
さて、様々なスカートスタイルをご紹介しました。
建築が外観と内部空間の一致から美しさを生むように、スカートもシルエットと素材と丈のバランスが揃ったとき、固有の空間が生まれます。
スカートはパンツに比べてシンプルな構造ゆえに、長さ・フレア量・素材のわずかな違いが、全体の印象を大きく左右します。
オーダーだからこそ、ウエストやヒップ、丈、裾回りを自由に設定する。それだけではなく、黄金比のプロポーション、生地の質感、光との関係——それらを建築物を設計するような視点で組み立てていく。それがオーダーならではの醍醐味だと思っています。
今日、どのスカートを選ぶかは、今日の自分が身を置く空間をどうしたいか、そんな問いかけに近いかもしれません。
今回のコラムが、スカートのオーダーやスタイルをより楽しんでいただくきっかけになりましたら嬉しいです。皆様のご来店を心よりお待ちしております。