こんにちは。大阪店の西脇です。
8月に入りました。猛暑日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
8月になると思い出す絵があります。
麦わら帽子を被った子どもがボールを追いかけている。
大人たちからは目が届かないところまで来てしまっているが、大人たちも気づいていない。
夏の強い陽射し、不穏な空気、ただその一瞬。
絵画は光と翳りが画面を分割しています。
8月の陰と陽のコントラストが強くなる、二度と戻らない時間…
そんな空気感、8月の記憶が、強く心に刻まれるような絵画だと思います。
8月といえば、まだまだ暑いのですが、夏の終わりの、ある種のもの悲しさを感じる時期。
ヨシムラでは、春夏のSALEが終わり、そして秋冬の生地が入ってくる前の「間」の時期でもあります。
今回は、光と影、初夏と秋冬、始まりと終わり、そのようなコントラストと時間の流れを強く感じる「合間」の時期に、実際に着用しているスーツについて、ご紹介していきます。
ここで、私が去年仕立てました、リネン・ウール・シルクの混紡生地のブラウンスーツをご紹介します。
生地はTallia di Delfino PORTOFINOのブラウンです。

Tallia di Delfino PORTOFINO (Wool 45% Linen45% Silk10%)
シルクの光沢がまだ暑い夏の光を反射し輝き、また、強い陽射しはリネン特有のシワを浮き彫りにし、陰影を刻みます。
去年の夏と今年の夏、たくさん着用しましたので、陽の光を浴びて、色褪せています。夏の時間が蓄積されたような風合いです。
深いブラウンでありながら、少し色褪せたこの生地は夏の日焼けした肌のようにも感じます。そして生地が柔らかくなり、シルエットもより身体になじむような感覚があります。
ポリエステルなどの機能性素材にはこのような経年変化の表情はなかなか出ないのではないでしょうか。
天然繊維は繊維自体が柔らかくなり、身体の動きの跡も風合いになります。
しかし、合成繊維は摩擦部分がテカリやピリングになりやすく、劣化のような印象が強くなってしまいます。
夏は、暑いので、ジャケットを着なかったり、気軽に洗える機能性素材の服が便利だったりもします。ただ、天然素材ならではの経年変化や風合いも、楽しめるものです。
まずは、ジャケットの仕様の意図についてご紹介します。
ゴージラインを下げて、ラペル巾は太く、ウエストはかなり絞ることによって、構築的なシルエットを強調しています。
また、釦位置を上げることによって、ウエスト位置が上がり、全体的な重心が上がって見えることにつながっています。Vゾーンを狭くし、ウエストは絞り、クラシカルな雰囲気を狙いました。
腕巾は少し細くし、袖釦は本切羽で空けられる仕様に。
スラックスの方は、コンパクトでタイト目なジャケットと対照的に少し緩めのシルエットにし、全体のバランスをとりました。
スーツの仕様は簡単にまとめると以下の通りです。
釦は、ヴィンテージのような風合いのメタル釦です。こちらは、生地が経年変化することを見越して、このような釦にしてみました。釦は持ちこみ釦を使用することも可能ですので、お気軽にお申し付けください。
8月の暑い日、たった数時間から1日で命を終えてしまう虫がいます。
蜉蝣(カゲロウ)です。
『詩経』曹風・蜉蝣に、次のような一節があります。
「蜉蝣之羽、衣裳楚楚」
(蜉蝣の羽、衣裳楚楚たり)
2500年以上前、人が虫の透明な翅を見て「美しい衣裳のようだ」と詠みました。
蜉蝣の羽は本当に宙に舞うためだけのもので、口も持たない生態のこの虫の命はたった1日で尽きてしまいます。
そんな夏の強い光を透き通らせて、飛び、その命を昇華させる蜉蝣。
その羽に強い光が当たるとき、光は様々な色に輝くことがあります。
これは、透明でありながらごく薄い膜のような翅が、通す光と反射する光によってきらめくのです。
8月の服は蜉蝣のように、光と翳を共存させながら、その刹那を目一杯楽しむ服でありたいですね。
例年残暑が厳しいので、8月の、秋冬までのその「間」の服は秋の始まりも活躍します。
少しずつ秋冬の生地も入ってきますので、お気軽に遊びにいらしてください。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。