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MODEなTuxedo

2018年11月15日更新


大阪は西区新町というおしゃれエリア笑に”IZA”というセレクトショップがあります。
この経営母体のGruppotanaka(グルッポタナカ)の田中社長は私が新卒で入社したRAIKA(ライカ)という国産アパレル時代の大先輩であります。
もうかれこれ四半世紀前になりますが、当時仕事は教わるものではなく、先輩の仕事ぶりを見て盗むもの、ヘマでもしようものなら鉄拳制裁!と平成も終わりつつある今では考えられない時代でした。
御多分に洩れず、田中社長もめちゃめちゃ厳しくて何度も怒鳴られましたが、今では多くのお客さんを紹介してくれるとても優しい先輩です。
その田中社長のIZAが毎年12月リッツカールトン大阪でピンクリボン(乳がん予防の啓発運動)のチャリティパーティを開催しており、私も毎回お呼ばれしているのですが、そこに出演するゲストがこれまた豪華!
ここで書いちゃうと先輩に叱られるので敢えて伏せますが、ご興味のある方は個別でお問い合わせください笑

さて今回はその先輩のショップスタッフNさんがパーティ用にタキシードをオーダーしてくれたので、そちらをご紹介したいと思います。
そもそも先輩のショップでもメンズの取り扱いがあり、某グランメゾンのタキシードを修理してほしいと持ち込まれたのですが、如何せんNさん、女性の方も驚きの細さ!何とウエスト64cm!
展開サイズの中で最も小さい44(イタリアンサイズ)、DROP8でウエスト72cm、お直ししたとしてもウエスト8cm詰めはほぼ不可能です。
それに袖丈も10cm以上長く、しかも本切羽(笑)、肩先だけで詰めるなんて、先輩の頼みでも無理です、と強く説得したところ、ならばオーダーしてしまえ、とのことでそのグランメゾンのタキシードをベースにしたデザインで受けることになりました。

それではベースとなるタキシードの画像をご覧頂きながらアレンジした点についてご説明したいと思います。

◇生地

"G1130" Loro Piana FOUR SEASONS Super130's Black shadow stripe

後程御覧頂くタキシードの素材はウールにボンディング加工※を施しており、生地のボリュームと独特の光沢感が特徴的。
特殊加工を施した生地はあまり出回らない為、同様の風合いの物ではなく、光沢感を第一に同ブランドで幾つか提案したところ、Nさんはこの細畝のシャドーストライプをお選びになられました。
意図的に光沢を出した見本のタキシード生地とは異なりますが、このロロピアーナの生地も負けず劣らず、流石の光沢感です。
クラシカルなタキシードではこの生地はありえませんが、今回のようにパーティウェアとしてのタキシードでしたら有り!でしょう。

※ボンディング加工とは・・・・
2枚の異なる素材の布地を張り合わせ,表と裏、どちらも使えるようにする加工法。
特殊な接着剤を使用することにより、表面がゴムのような風合いになり、独特の光沢感と防水性が発生する。
ヨーロッパのコレクションブランドに人気の素材だが、国産アパレルは割と敬遠しがちである。
というのも、専門性の高いクリーニング店でないと、表面の加工に変化が起こる可能性が有る為である。

◇デザイン

赤で反転させている箇所が今回のポイントです。

ジャケット
基本デザイン シングル1B
衿型 ピークドラペル 衿幅6cm 拝絹無し
ベント ノーベント
腰ポケット フタ無し 口は縫い付け
袖仕様 本切羽3B
ボタン くるみボタン

今回ベースとなるタキシードがこちら→今回ベースとなるタキシードがこちら↑
ここ最近のグランメゾンのテーラードクロージングはおおよそこのスタイルが主流ですね。
ナローラペル、ショートレングス、タイトシルエットにAライン、といったところでしょうか。
今回は100%copyではなく、幾つかディテールを変更することにより、タキシードらしさを抑えつつ、パーティウェアとしてのフォーマル感を持たせるように致しました。

まず1.ラペル、タキシードのラペルは見本のようにショールカラーが正統派
本当はシルクのサテン地を使用するのですが、シルクは繊細は素材ですので縫い合わせの際に引き攣れを起こしやすいので現在はポリエステル製が殆どです。
ただ拝絹仕様にすると着用シーンが限定的になるとのことで、今回は拝絹無しのピークドラペルに。
見本のタキシードの雰囲気に近づけるようラペル巾は限界の6cmに設定しました。

続いて2.腰ポケット&ボタン、フォーマルウェアは基本屋内で着用する衣装なので、腰ポケットのフタ(雨蓋)は付けません。(屋内では雨でポケットの中に入れた物が濡れるはずが無いからです)
ただ今回、ラペルは拝絹無しで、ポケットも通常のフタ無しだと普通のブラックスーツになってしまうので、玉縁の生地をポリエステルサテンを使用し、ポイントでフォーマル感を持たせるように致しました。(パンツのピスポケットも同様です)
またボタンも通常のタキシードですと表地でくるんだ物(くるみボタン)を使用致しますが、今回はポケットの玉縁同様にサテン地で。
表地とサテン地、同じ黒でも織り方と光り方が異なるので、ちょっとしたアクセントになるでしょう。

パンツ
タック ノータック
サイドポケット ストレート
裾仕様 シングル モーニングカット
ピスポケット 両玉縁(サテン地)左右ボタン無し 口は縫い付け

以上、今回はこの内容にて進めることとなりました。
見本の雰囲気を見事再現出来るか、いささかの不安はありますが笑、先輩にも気に入ってもらえるように頑張って御仕立したいと思います。
皆さんの仕上がりを楽しみにお待ちください。


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