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【超】ロングコートのお仕立てです。


皆さん、こんにちは。
空気が澄んでいて、冬の寒空を見上げて歩く毎日を過ごすことが楽しみの大嶋です。

冬生まれの私は、大好きな冬がやってきた!と歓喜しておりますが、皆さんは冬と夏、どちらがお好きでしょうか。

選べる服が多くて楽しい、重ね着をすれば寒さをしのげる、空気が澄んでいて心地がいいなどなど、魅力がたくさん詰まっている冬。
ぜひご来店の際に冬への熱意、夏への熱意、お聞かせください。

さて、今回の「お客様いらっしゃ~い」は、重ね着には必要不可欠なアウター、【コート】のご紹介です。

しかしただのコートじゃございません。
タイトルのある通り、【超】ロングコートです。

最近は足取り軽やかに動けるよう、軽く着られるよう、着丈が短く、モダンテイストなコートが多いかと思います。

そんな中でクラシックな、着丈の長いコートを探そうと思うと、やはりたどり着くのはオーダーが最適かなというところ。

ご注文いただいたリピーターのS様もその1人です。
ではどんな経緯で、ご注文に至ったのかご紹介を始めさせていただきます。

【超ロングコート】の始まりは1通のメールから。

ご来店店舗名 = 東京店
ご来店日時 = 2024/10/*
お名前 = S様
メールアドレス = *****
〒 = *****
ご住所 = *****
TEL = *****
連絡事項 =

Sさん: 黒のウール生地の「チェスターフィールドコート」を考えています。
(日常使いなので、カシミアは耐久性の点で難しいかなと)
いくつか生地を見せていただきたいと思っています。
大嶋: S様
お世話になっております。
YOSHIMIURA&SONS(大嶋)です。
昨日はお忙しいところご来店予約いただきましてありがとうございます。
さて10/19(土)13時ごろ店舗にお越しいただけるとのこと。
ありがとうございます。

今回は「日常使いのチェスターフィールドコート」
色は黒系ですね。かしこまりました。
使い方にもよりますが、日常使いというとおっしゃる通りウール生地の方が好ましいケースもありますね。

それでは、お席ご用意してお待ちしております。
当日お気をつけてお越しください。

コートの定番といえば「カシミア」が有名ですが、Sさんのおっしゃるように耐久面という点はウールに劣る部分があります。
ウールの黒で耐久性があるもの、うーん、、、あれと、あれと、あれと、、、
と考えているうちにSさんから返信が。

Sさん: YOSHIMIURA&SONS 大嶋様
ご返信ありがとうございます。
10/*はよろしくお願いいたします。
さてお願いしようとしているコートですが、今着ている【超ロングコート】
(はるか昔に貴店で作っていただきました)と同じような感じで考えています。

そこで今のコートをお持ちしたく車で行きたいのですが、近隣にコインパーキングがあれば、教えていただけないでしょうか。

来店予約時に記載しました通り、日常使い(通勤で週3-4日着用)ですので、ウール生地やそこそこ耐久性のある生地を何点かご用意いただけると助かります。(あまりコートの重さは気にしません)
よろしくお願い致します。
大嶋: S様
お世話になっております。
YOSHIMIURA&SONS大嶋です。
昨日はお忙しいところご連絡ありがとうございます。

さて、今回のご希望のコートについて昔にお仕立ていただいた【超ロングコート】と同じようなイメージですね。
【超】とつくほどですから、ぜひ見させていただきたいです。

コートをお持ちいただくにあたってお車でのご来店を検討されているとのこと。かしこまりました。
近隣のコインパーキングは「三井のリパーク神田須田町1丁目第5」です。
なお店舗脇にYOSHIMIURA&SONS専用駐車場がございます。
1台限定で、先着順となりますが、もし空いていれば、店舗脇の駐車場に停めてはいかがでしょうか。

生地のご希望については、〈日常使い用、耐久性を重視〉
重さは特段気にされないとのこと。かしこまりました。
いくつか候補をご用意してお待ちしております。
それでは、10/* Sさんにお会いできるのを楽しみにしております。
当日お気をつけてお越しください。

今回のキーワード【超ロングコート】が早くも登場しました!
はるか昔、、、超がつくほどロング、、、うーん、早く見たい!
重さも気にしないということであれば、生地はやっぱりあれかな。。。
それでも、いくつか用意してと、、、

黒となると生地に限りが出てくることが多いですが、
今回のご要望に合う生地となれば、やはり強度には定評のある冬定番のあの生地か。
と考えを巡らせ、ご予約当日を待ちました。


10月某日

Sさん: 予約したSです。駐車場の案内ありがとうございます。
大嶋: いらっしゃいませ。お待ちしておりました。
ちなみにご連絡いただいた【超ロングコート】というのが、その手に持たれているものですね。
Sさん: はい、これがそうです。
実物がないと伝わりにくいと思ったものですから。
大嶋: とてもありがたいです。さっそくですが見させていただけますか。

なんじゃこりゃ!と言ってしまいそうになりました。笑
掛けられるかななんて心配しながら写真を撮らせていただきました。

また着用されるとこんな感じです。

分かっていましたが長い。。。

コートの裾と、地面の距離がなんとまあ近いこと。
着ていただくにも地面に裾がつかないようにするのはなかなか難しいほどです。

大嶋: 【超】がつくだけあって本当に長いですね。。。
Sさん: でしょう?
大嶋: この長さは普通に探しても見つからないですね。
Sさん: そうなんですよ。なので以前もヨシムラさんでお願いをしたんです。

店舗に遊びにいらしたことがある方は、イメージがつくと思いますが、
YOSHIMURA&SONSの生地の棚についているフック、その高さは床まで約160cm。
写真を見てわかる通り、一番下の生地棚の底まで着丈がきている状態。

身長が180cm後半もあれば、そこまで長く感じないかもしれませんが、Sさんのご身長おおよそ170cmほど。これが【超ロングコート】
当時、実物なしでこれを仕立てたと思うと、、、恐るべし。

大嶋: では【超ロングコート】を見させていただいたところで、
おすすめの生地をいくつかご覧ください。

生地決め

No.1 ハリスツイード 黒無地

ハリスツイード 黒無地

冬の定番、〈ハリスツイード〉より、シックな黒無地です。
耐久性はもちろん防寒性も高く、ジャケットがあるだけで、コートがいらない、なんていう方もいらっしゃるような、これぞ冬の素材という生地。

No.2 葛利毛織Super140‘sフランネル

葛利毛織Super140‘sフランネル

日本を代表するメーカー〈葛利毛織〉より、エレガントでなめらかな生地感を演出するSuper140‘sのフランネル
繊維長16.5ミクロンの羊毛を織物にしたことで高級感があり、こちらも冬の素材として代表的な生地。

No.3 YOSHIMURA&SONSオリジナルウールカシミア

YOSHIMURA&SONSオリジナルウールカシミア

葛利毛織さん協力のもと、「時代を超えて愛される王道を行くものを作る」というコンセプトをもとに創り上げた生地。
Super140‘s原毛にカシミアを20%使用した高級感と防寒性があり、一度見て、触って、そしてお仕立ていただきたい、ぜひワードローブに加えていただきたい、絶対に損をさせない最高品質の生地。

大嶋: 3つご紹介させていただきましたが、
私のおすすめは〈ハリスツイード〉です。
というのも、ハリスツイードは当時船乗りたちの防寒着として愛用されていたこともあり、潮風、波しぶきを受ける船乗りたちの「ライフウェア」ととして、がしがし着ていたなんていわれています。
これを着てSさんが船に乗る、なんてことはないと思いますが、防寒に加えて、日常生活の雨風はなんなく防いでくれます。
Sさん: なるほど、確かにその話を聞くと、〈ハリスツイード〉がいいように思いますね。
ちなみに、ご提案いただいた他の生地は耐久性がないんですか?
大嶋: 耐久性がないわけではないですが、ハリスツイードと比べてしまうと、勝ち目がない、といったところでしょうか。
Sさん: なるほど。今回のメインは日常使いできる耐久性のあるものという点が一番ですから、おすすめいただいた〈ハリスツイード黒〉でお願いします!
大嶋: かしこまりました!

生地が決まり、続いてデザインです。
お持ちいただいたコートをもとに決めていきました。

デザイン

基本デザイン ダブルチェスターフィールド

ピークラペル

ピーク衿
腰ポケット ハッキングフラップ付ポケット
胸P バルカポケット
ベント センターベント(ボタンなし)
袖ボタン 3個
ステッチ ミシン7mm
ボタン 本水牛
裏地 ポリエステル裏地えんじ色

お持ち込みいただいた【超ロングコート】は、シングルでしたが、今回のお仕立ては「クラシックの王道ダブルブレスト」をおすすめしたところ「ぜひ」ということで決まりました。

ハリスツイードは、生地が分厚く、通常のスーツによくお付けするピックステッチが入れられないため、ミシンステッチにて、衿に表情をつけていきます。

気になる点は「裏地」ではないでしょうか。

敢えてポリエステル裏地にした今回のオーダー。
ハリスツイードでのお仕立てにはよくある注文なのですが、
これは、キュプラ裏地とポリエステル裏地の違いが要因です。

YOSHIMURA&SONSをご利用いただいている博識な皆さんはご存じの方多いと思いますが、敢えてご説明させていただきます。

キュプラ裏地とは
綿の種子の周りにある産毛のようなものを使って作られる「再生繊維」であり、天然由来の原料を使うことで、肌触りの良さ、吸湿性の良さなどを感じていただけるため、体により近いスーツでは、これを使うと高級感のある着心地の良い仕上がりになります。

ですが、水にあまり強くなく、ポリエステルと比べると、デリケートな繊維といえる部分もあるという特徴を持ちます。
ポリエステル裏地とは
ご存じ「化学繊維」です。
速乾性、耐久性に優れ、さまざまな機能(ストレッチ性や抗菌性など)を付与することができ、かつ安価という優秀な素材です。

ですが、キュプラに比べ、硬く肌触りに劣ります。
また、静電気が起きやすい、熱がこもりやすいなど、特徴があります。

さて、本題に戻りましょう。
なぜハリスツイードには「ポリエステル裏地」をつけることもあるのかといいますと、
ポリエステルの特徴として挙げた「硬さ」これがハリスツイードとは相性が良いためです。

強靭なハリスツイードを使ったアイテムは、裏地が先に痛み、取り換えをしなければいけないということが多々見られます。

その点硬さからくる耐久性を持つポリエステルをつけることで、裏地の寿命を高められます。
(裏地の張替えはなかなかの修理金額になってしまいますからね、、、)

ご用途によってご案内を変更し、またキュプラだから着用後すぐに破れてしまうということもないですが、今回のケースではポリエステルがうってつけでしょう。

ということで、ポリエステル裏地でのお仕立てとなりました。

採寸

はるか昔のお仕立てでしたから、当然サイズが判明する採寸表は無く、
1から測るところからスタートです。

お持ちいただいたコートを測りながら、
当日のSさんのご体型に合わせてご案内。

肝心の着丈については、なんとお持ちの【超ロングコート】よりも【さらに丈をプラスしました!】
というのもこんな背景が。

大嶋: Sさんが一番こだわりたい箇所の着丈なんですけども、
お持ちの【超ロングコート】と今回お仕立てするコートの型紙が同じということはお仕立てから時間が経っていることもあり、ないと思うんです。
なのでお測りした着丈をそのまま記載しても全く同じにはならない可能性があるということだけお含みおきください。
Sさん: なるほど。そういったこともあるんですね。
ではこの際、少し長くしてしまいましょう!
大嶋: えぇ!これよりも長くですか!?
Sさん: えぇ、短くなってしまうよりは長い方が私は好きなので!
せっかくのダブルですからちょうどいいかと!
大嶋: では仰せのままに、少しですが長くしておきます。

どうでしょう。
十分すぎるほど長いものをさらに伸ばしてもいいとおっしゃるSさんはとても笑顔で
本当に長いコートがお好きなんだなと感じました。

この笑顔にお答えするためにも最大限の力を尽くし、採寸を終えました。


さて、どんな仕上がりになるでしょうか。

Sさんのはるか昔に作った超ロングコートを令和の時代に再来させることができるのか。

それでは、今回の「お客様いらっしゃ~い」は以上です!
次回の「お客様ありがとう」をどうぞお楽しみに!

皆さんのご来店心よりお待ちしております。


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