執筆者:大阪店 河本
こんにちは。大阪店の河本です。
満開だった桜も散り始め、目には葉桜が優しく映る季節となりましたが、読者の皆さんは4月からの新生活、いかがお過ごしですか?
ようやく暖かくなってきたとはいえ、この時期は花冷えの日もございますので、どうぞご体調には十分気を付けてお過ごしください。
さて
今回の『お客様いらっしゃ~い』では、ヨシムラ(大阪店)での注文は2回目の、二度目ましてハイセンスリピーター様より、非常にファッショナブルなご注文を頂いましたので、そちらをご紹介したいと思います。
ご登場いただくお客様の名はYさん。
いつもお世話になっているあるリピーターMさんからの紹介で来店いただき、先述のように今回が2度目のご注文でしたが、実は初めてのオーダーの際もかなり(いい意味で)ハードな注文でして・・・
それを踏まえ、先ずはYさんについてご紹介させていただきます。
Yさんのお仕事はバーテンダー。
普段お仕事の際は、特にスーツは着用されず、主にベストスタイルが基本なのですが、プライベートスタイルとしてよくスーツをお召なられるみたいです。
そこで、Yさんが働かれているバーの常連さんであったリピーターのMさんが、ヨシムラを紹介していただき、ご縁ができたのですが、初めてのオーダーはこんなものでした。
Yさん: | 河本さん、こんな感じのスーツを作りたいです! |
見せられた画像は、【marty supreme】という映画で主演の「ティモシー・シャラメ氏」が着用していたスーツ。 まるで、30年~50年代のスーツスタイルをミックスさせたようなソフトで優雅なスーツですが、一際特徴的なデティールがありますよね。
そう、この衿!
ここまで下衿が平行になっているセミピークは見たことがありませんでしたが、なんとか工場と色々話し合いながら完成させたスーツがこちら。
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かなり本家に近づけたインパクト抜群の衿が魅力のスーツに仕上げることができました。
そして、無事Yさんにも喜んでいただき、納品完了。
初めてのご注文でかなりハードなご依頼でしたが、なんとか仕上げることが出来、ホッ一息、、、しようとしたのも束の間!
その納品時に、今回のご紹介する “ラグジュアリーなセレモニースーツ” のご相談を頂いたのです。
ここからが本題です。
Yさん: | 実は、結婚式の参列用などのセレモニースーツも1着考えていまして・・・ |
河本: | セレモニースーツですね、ありがとうございます。 ちなみに今回はどんな感じのをご検討されてるんですか? |
Yさん: | 実はもうイメージは出来ています。 色は光沢のある黒で、ディテール・シルエットはこんな感じにしていただきたいです。 |
なるほど~。
今回は、かなりエレガント色の強いディテール・シルエットをご希望とのこと。
参考の画像は、〈サンローラン・2024AWコレクション〉のルック。
にしても、流石はモード界の帝王サンローラン。
実にドレープが美しく、またどこか力強さも感じるエレガントなシルエットです。
河本: | おっ、いいですね~。美しい! |
Yさん: | そうですよね!これを光沢のある黒の生地で仕立てたらカッコ良いかなと。 |
河本: | めちゃくちゃ良いと思います! ただ、今回も色々と入念な打ち合わせが必要ですね。。。 1つ1つしっかりお話しながら決めていきましょう! |
ということで、先ずは生地決めから。
河本: | 光沢のある黒の生地ですが、この塩梅も難しいところで、、、 |
Yさん: | というと・・・ |
河本: | このサンローランのルックを再現するには、やはり結構綺麗な光沢感が必須になると思います。 ただ、セレモニースーツといっても、例えばご結婚式の参列など、Yさん自身が主役ではないことが多いですよね。 |
Yさん: | はい、そうです。 |
河本: | ですので、あまりに光沢の強い生地で仕立ててしまうと、返ってその場にそぐわない(Yさん自身が主役のような)スーツになってしまいます。 ただ、柔らかい生地感でドレープも演出できる生地が良いので、、、 その程よく綺麗な光沢と柔らかい生地を兼ね備えている生地が理想なんですよね。 |
Yさん: | そんな生地あるんですか? |
河本: | ん~、、、お任せください! |
河本、実はご相談いただいた時点で、もうご提案する生地を1つ、決めておりました。
ただ、Yさんもスーツに関してすごい知識のあるお方ですので、一筋縄ではいかないと思い、まずは提案してみて、そこから色々話し合いながら決めていこうと考えていたのですが、、、まさかの1発OK。
Yさんが、ご提案した生地を気に入ってくださり、すんなり決まってしまいました。
その決まった生地がこちら。
ロロピアーナのジランダーは、綺麗な光沢がありながらも柔らかくしなやかな生地感も兼ね備えた、上品でエレガントなスーツスタイルを演出できるファブリックです。
また、イタリーファブリックには珍しい〈ストレッチ性〉にも優れているという、機能性も魅力の1つ。
特に結婚式の場などでは、立ったり座ったりすることも多いですので、このストレッチ性は非常に嬉しい機能であります。
このように、生地の美しさ・しなやかさ、さらにストレッチという機能性も備わったこのロロピアーナ・ジランダーは、まさに今回Yさんがご希望されているスーツに最適なファブリックであります。
こうして、生地はもうドンピシャなものがありましたので、まずは生地決めという第一関門は突破。
続いて第二関門は、ディテール(デザイン)決めです。
河本: | ディテールについてなんですが、これはお見せいただいたルックを踏襲する形でお考えですか? |
Yさん: | そうですね。基本はこのルックのディテールを踏襲してください。 ただ、画像では見えない部分もありますよね、それは想像でいきましょう (笑) |
ということで、ディテールはルック画像の通りの仕様となりましたので、画像を2人でじっくり見ながら、確認していきます。
そうして決まったディテールがこちら。
基本デザイン | W6×2 |
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衿型 | ピーク衿 |
ベント | センター |
腰ポケット | フラップ付き平行 ※ルック画像ではフラップ無しだが、ここは好みを反映 |
袖口 | 4つキッシング本切羽 |
タック | 2本インタック |
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脇ポケット | ナナメ |
ピスポケット | 右ボタン無し左ボタン留め |
裾形状 | シングルモーニング |
その他 | ベルトループ付き サスペンダーボタン付き |
生地、ディテールについては比較的スムーズに決まりましたが、今回最大の難関は、このシルエット決めです。
今回のオーダーに関しては、シルエット作りが一番のカギとなります。
念のため、もう一度ルック画像の確認をしましょう。
特に拘らないといけないのが〈上着〉。
一目見て特徴的な箇所は分かると思いますが、一つ一つ見ていくと、これがまた複雑で。
シルエット以外にも、ボタン位置やゴージ位置など、いろんな要素が絡み合っているため、画像をもとに、Yさんと細かく話し合いながら決めていきます。
このルックを再現するための上着の拘りポイントは以下。
他にも細かい点は色々ありますが、大きくは上記の点がルックを再現できるかのカギであり、拘りのポイントです。
まるで30‘sスタイルのようなXラインをベースに、クラシカルな昔ながらの要素と現代的な要素を組み合わせたモダンなルックを、どう再現するのか。
では、この拘りポイントについて、詳しく解説していき、、、
と言いたいところですが、今回はここまでにしておきましょう。
この続きはまたのお楽しみ!ということで、次回の『お客様ありがとう』にて、仕上がり品と共に、拘りポイント等を詳しくご紹介させていただきます!
仕上がりは1か月後。
果たしてYさんのご希望通り再現できたのか!
私もドキドキしながら楽しみ待ちたいと思います。