2025年5月30日更新 執筆者:大阪店 河本
いつの間にやら立夏も過ぎ、暦の上ではもう夏が始まっているんですね。 正直今くらい過ごしやすい暑さが「本来の夏」であれば嬉しい限りですが、、、 まぁそんな切実な願いもお構いなく、また暑苦しい猛暑の夏がやってくることでしょう。 爽やかな新緑の季節が続けばいいのになぁ~とここから願っている大阪店河本です。 さて 今回の『お客様ありがとう』では、大阪店のハイセンスリピーターYさんよりご注文頂いた【ラグジュアリーなセレモニースーツ】がようやく完成しましたので、その仕上がりを拘りポイントと合わせてご紹介したいと思います!
※前回までの詳しいお話は【2025/4/25更新 ラグジュアリーなセレモニースーツ】よりご覧ください。
本題に入る前に、先ずはおさらいから。 日頃よりお世話になっているリピーターMさんのご紹介でご縁ができた、二度目ましてのハイセンスリピーターYさん。 一回目のご注文からかなりハードなご依頼 (嬉しいご依頼です)だったのですが、無事納品することが出来、ホッと一息、、、付こうとしたのも束の間。 その納品時に、あるご相談を頂きました。 それが、【ラグジュアリーなセレモニースーツ】。
Yさんは結婚式の参列用などのセレモニースーツをご検討されていたのですが、その参考となるものというのが、〈サンローラン・2024AWコレクション〉のルック。 生地は光沢のある黒で、ディテールやシルエットについてはこのルックのような、ドレープが美しく、どこか力強さも感じるエレガントなものをご希望されていました。 それを踏まえ、先ず決まった生地・ディテールがこちら。
上品でエレガントなスーツスタイルを演出できる『ロロピアーナ ジランダー』。 美しい光沢に柔らかくしなやかな生地感、またストレッチ性をも兼ね備えた、今回のご依頼にはドンピシャの生地です。
ディテールはルック画像の通りの仕様となりましたので、画像を2人でじっくり見ながら確認し、上記の内容で決定しました。 では早速ですが、これより完成した【ラグジュアリーなセレモニースーツ】を見ていただきましょう! 果たしてどういった仕上がりになっているのでしょうか。出来上がりはいかに! 拘りポイントについても詳しく解説していますので、是非ご覧ください! それでは、Yさんのご登場です!
“うん、カッコ良い・・・” 高級感溢れるラグジュアリーなスーツに仕上がったのではないでしょうか。 上着はダブル仕立てでパンツもゆとりのあるサイジングと、贅沢に生地を使っていますから、生地の光沢、ドレープ感がしっかり出ていて非常に美しいです。 ちょうどご試着の際にお召なっていたピンホールシャツ・イエローゴールドタイのコーディネイトもすごく素敵で、フォーマルライクだけど差し色の効いた遊び心のある粋な着こなしは、Yさんの真骨頂。流石で一言でございます。
このスーツをカッコよく仕上げるための一番のカギは『シルエット』です。 今回はこのシルエット作りに最も力を入れました。 念のため、もう一度ルック画像を確認しましょう。
特に拘ったのが、〈上着〉。 一目見て特徴的な箇所は分かると思いますが、一つ一つ見ていくと、これがまた複雑で。 上着の拘りポイントは以下。
他にも細かい点は色々ありますが、大きくは上記の点がルックを再現できるかのカギであり、拘りのポイントです。 ではそれぞれ解説していきます。
ルックを見る限り、一般的な着丈に比べかなり長く設定されていることが分かります。 ただ、だからといって、むやみやたらに長くしたらいいというものではありません。 着る人の身長や体型によってバランス感は変わりますので、今回はそのあたりを意識した上で、クラシック且つエレガントな雰囲気になるよう、着丈を決めました。 因みに、今回のスーツでは、Yさんの標準的な着丈の長さより+5.0cm 長くしています。
肩幅を広く設定し、パットは一番厚い2.0cmパットを使用。 また、肩先が盛り上がったコンケープドショルダーに仕上げることで、肩が強調された力強さを感じるシルエットになります。 ルックのように、ドレープが美しい、ただどこか力強さも感じる。 そんなエレガントなシルエットを演出するためには、この肩も非常に重要なポイントです。
長めの着丈に対しウエストを極端に絞ることで、肩から裾に掛けて光沢のある生地感と相まった非常に綺麗なドレープ・Xラインが生まれます。 ルックでは、シワがしっかり入るぐらい絞りを入れていますが、今回は極端に絞っているもののシワは軽く入る程度で設定しました。 ダブル仕立てのスーツはクラシックな印象が強いですので、仕立てる場合は、こういったシワは付けたくない、という方がほとんどです。 ただ、イタリアのスーツスタイルとして、敢えてウエストラインにシワを入れた『ジャッカストラッパーダ』という着こなしがありますので、イタリアンスタイルに仕上げたい場合は、こういった仕立て方もオススメです。
ゴージラインを限界の-2.5cm下げ、ラペルを限界の11.5cmまで広げています。 これだけでかなりルックのような形に近い雰囲気のある仕上がりになるのですが、実は、より再現度を高くするために、もう一工夫加えております。 それが、胸ポケットの位置です。
分かりやすいように、全く同じ形の参考ルックを用意したのですが、胸ポケットに注目してください。 見ると、胸ポケットにラペルがかかっているのが分かると思います。 これは、ゴージラインを下げたことで、胸ポケットの位置までラペルがきて重なる、ということですが、ただ単位にゴージラインを限界まで下げるだけでは、このように重なることはありません。
そのため、ゴージラインとは逆に胸ポケットの位置を+2.5cm高く設定しました。 そうすることで、ルックのようにちょうど胸ポケットとラペルが重なるようにしているのです。
ルックを見ると、一番上のボタン2つはやや低く、ただ一番下のボタン2つはやや高くなっているのが分かります。 また、一番下のボタンの位置に合わせて腰ポケットの位置も高く設定されています。
そのため、このようにボタンの位置と腰ポケットの位置をバランスを見ながら細かく設定しております。 ここでの注目ポイントは、胸ダーツとボタンの位置です。
画像を見ると、通常は胸ダーツの上にボタンがありますが、参考のルックをでは胸ダーツの下にボタンがきています。 例え、一番の上のボタンを低く設定しても、この胸ダーツよりも下にきていなければ、細かい部分まで再現できているとは言えません。
ですので、そういった部分にも拘り、しっかり一番上のボタンが胸ダーツよりも下にくるよう、その他のボタン位置とのバランスも見ながら設定しました。
さてさて こうして仕上がったラグジュアリーなセレモニースーツですが、Yさんの反応は?
っと、嬉しいお言葉と共に、また次回の宿題も用意いただけることになりました!
今回あまり触れませんでしたが、上着だけでなくパンツもすごく素敵な仕上がりで、スラックス好きな私もつい興奮してしまいました。 ここまで生地を贅沢に使ったパンツは、単品使いしても非常にサマになりますので、是非スーツでの着用のみならず、色々な着こなしを楽しんでいただきたいですね!
以上、今回はYさんよりご注文頂きました【ラグジュアリーなセレモニースーツ】の仕上がりについてご紹介しました。 実はYさん、普段はバーテンダーのお仕事をされているため、お仕事用のベスト&スラックス、またシャツなど、スーツの他にも色々をお仕立ていただいております。 これらもまたかなり面白いものになっていますので、どこかの機会でお披露目でたらなと考えております。 皆さん楽しみにお待ちください! 改めましてYさん、この度はご注文、そして本コーナーのご出演誠にありがとうございました。 今後共、よろしくお願いいたします!